36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2013年度 日本福祉大学
第11回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
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第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
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入賞者発表
第3分野 わたしが暮らすまち
優秀賞 「てんでんこ」を越えて
青森県立八戸西高等学校 2年 下舘 龍也

 激しい地震の後には、必ず大津波が来る。こんな時は、「てんでに高台に逃げろ。とにかく逃げのびて自分の命は自分で守れ」。これが「てんでんこ」で、北海道の奥尻島地震でも言われたことだ。実際に三・一一の東日本大震災では、「てんでんこ」に逃げて助かった小学生もいた。また、みんなが揃うのを待っていて、たくさんの犠牲者を出した小学校もあった。しかし、非道な感じもするこの「てんでんこ」は、差し迫った状況での止むを得ない選択でなければならないと思う。例えば、休日で家庭にいるとき身近に幼い兄弟や、介護が必要な高齢者がいる場合もある。五体満足な高校生である私が、このような人を残し「てんでんこ」で、真っ先に逃げることはできるだろうか。三・一一の被災地で津波防止の水門を閉じようとした消防団員の死を、私は無駄だったとは思いたくない。
 三・一一の大震災で、私の住む八戸市白銀町では、自主防災組織が大きく機能した。海沿いの人々が、いっせいに高台の公民館に避難した。民生委員が高齢者の安全確認、防犯協会員が各家庭の安全チェックをした。また、古ストーブを、車であちこちから借り回ったオヤジの会の人達もいた。今、高校生になった私にできることは、その人たちのアシストをすることだ。共助による活動が、地域の絆を作り出すものと、私は信じたい。
 「てんでんこ」の前にやるべきことがあるのではないか。例えば、老人の施設や幼稚園、小学校などの手助けが必要な人達のいる施設は高台にそれを建設する、一人暮らしのお年寄りの住居を前もって町内会で把握しておく、避難場所や経路を定めて何度も訓練を繰り返すなどである。
 最終的には、津波の猛威の前に「てんでんこ」しか方法のない弱い人間だからこそ、震災の体験を忘れずに知恵を絞り合わなければならないと私は思う。美しい海と共に生きる私の町を守り続けるために。

講評

 自分が実際に体験したこと。そして、その体験を通して考えたことを、うまくまとめています。東日本大震災の時に、作者が住むまちではどういう対応をしたかや、どんなつながりがあったかを具体的に書いているところがいいと思います。そして、事実だけを書くのではなく、自分の命を守るために「てんでんこ」で真っ先に逃げるのか、それとも地域の人たちを助けるのか……というギリギリの選択をしなければいけない時にどうするかを、みんなで知恵を絞り合わなければいけないという作者のメッセージまできちんと書かれているところがいいですね。

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