36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2013年度 日本福祉大学
第11回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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座談会

タイトル、書き出し、読みやすさ。少しの工夫でさらに良い作品になります

11回目を迎えたエッセイコンテスト。最終審査まで残った作品は粒ぞろいで、一段とレベルが上がったという印象を受けました。審査員の皆さんに、審査していて感じたことや、来年応募される方に気を付けていただきたい点などを話していただきました。

審査員プロフィール

第3分野と第4分野にいい作品が多くありました。
二木 私は今年初めて審査員をさせていただくので、どんな作品が集まるかをとても楽しみにしていました。今年の応募作品数は9152点で、昨年より226点増えました。第5回に続く2番目に多い数字で、大勢の高校生に応募していただいたことをまず感謝します。
川名 応募点数全体は増えていますが、分野別に見ると差がありますね。第1分野と第2分野は3000点を超える応募がありますが、第3分野と第4分野は1500点にも達していません。でも、第1分野・第2分野は同じ様な話が多く、第3分野と第4分野に読み応えのある作品が多かったような気がします。特に第3分野は入賞作を始めとして上位の作品は「自分が住むまち」についての深い思いが綴られていて、好感を持ちました。
杉山 日本全国には、私たちの知らないことがまだまだたくさんあって、そこに住む人たちの暮らしや文化に誇りを持って書いている作品が多く、読んでいて楽しくなりました。残念ながら入賞作品に選ばれなかった作品の中にも印象に残る作品がいくつもありました。
背伸びせず、等身大の自分を書きましょう。
板垣 第4分野は「社会のなかのどうして?」というテーマのため、大きな問題を取り上げて大所高所に立って意見を言う作品と、自分の身近なことを言う作品があり、どちらを評価するか迷いました。
杉山 社会へ、国へ、そして世界へと視野を広げていくことは大切ですね。でも、背伸びしすぎないことが大事です。等身大で書かれた作品の方がいいですね。
川名 私はどの分野においても、自分が体験したり、行動した内容を書いた方を高く評価しています。上位に選ばれるのは、高校生らしい感性にあふれた作品です。でも、第3分野は毎年4つの分野の中で一番応募作品が少ないので、もっと増えて欲しいと思っています。
中田 文章の内容も重要ですが、情景が目の前に浮かぶような描写や説明があると、イメージが広がって感動します。私はそんな作品に高い評価を付けました。
二木  今回初めてエッセイコンテストに参加して、いろんな個性の作品を読み、点数をどうやってつけるか悩みましたね。審査員の皆さんの採点を見ても、評価が分かれることがあり、逆にそこがおもしろいと思いました。今回の審査会でいろんな意見を聞くことができ、参考になりました。
中田 皆さんがおっしゃるように、第1分野と第2分野は特徴のある作品は少なかったですが、全体的にレベルが高く、こなれていて読みやすい作品が多かったですね。特に第2分野のテーマである「家族」は高校生にとって一番身近にいる存在なので、具体的な会話を盛り込みながら自分の考えを表現しやすいのでしょう。
杉山 核家族化と言われていますが、第2分野ではおじいさんやおばあさんだけでなく、ひいおじいさんやひいおばあさんとの触れ合いを書いている作品も何点かあり、4世代のつながりがあることを心強く思いました。ただ、お母さんのことを書いた作品は多いのに、父親との関係を書いた作品が少なかったのは、男性としては残念です(笑)。
二木  特に第2分野は、家族の言葉から始まる作品が目立ちました。今年の特徴なんでしょうか。
板垣 出だしは大事ですよね。出だしがいいと読みたくなります。また、作者は詳しく書いているつもりでも、とりとめのない話が長く書かれていると、もう少しスッキリまとめて言いたいことを詳しく書けばいいのにと思ってしまいます。
「読みやすさ」にも気を配って。
杉山 エッセイというのは読みやすいことが第一です。そして、読み終えた後に何か残らないと意味がありません。だから、時代意識を読み取れる作品や、自分の気持ちをしっかり書いた作品にして欲しいと思います。
板垣 私もそう思います。肩肘張って、力んで書いている作品もありますが、優秀作品に選ばれるのは等身大の作品です。難しい言葉を使うのではなく、自分が日常的に使っている平易な言葉を使いながら、気持ちを素直に書いた作品の方が印象に残ります。
川名 読みやすさの中には、きれいな字でていねいに書かれていることも大きなポイントになりますね。今回の入賞作の中にもとてもきれいな字で書かれた作品が何点かありました。きれいな字で書かれているとエッセイの魅力が何割もアップします。あと、誤字が目に付く作品もありました。書き終えたら必ず読み返して、誤字脱字がないかをチェックすることも大切です。
杉山 読みやすさというと、原稿用紙の使い方も大切です。ぎっしり書かれている作品より、行間にゆとりがあったり、適度に改行をして空白部分を作った作品の方が読みやすいですね。
板垣 原稿用紙の書き方もしっかり守って欲しいと思います。文字数の規定がありますから、注釈があれば欄外に書くのではなく本文に組み込んでください。また、毎年言っていることですが、タイトルも重要です。今年は説明的な長いタイトルの作品が気になりました。題名を見て、「何が書かれているんだろう?」と引きつけられるような作品にすると、もっと良くなります。
中田 タイトルは大事ですよね。そして、周りの人から言われた言葉がとても良かったという作品がいくつもありましたが、そこにその言葉を言った人がどんな人なのかを加えると、作品にもっと深みが出ると思います。
二木 最初に第1分野と第2分野が物足りなかったという話が出ましたが、「家族との関係」も「人とのふれあい」です。そこで、来年は分野やテーマの見直しも検討したいと考えています。本学は「ふくしの総合大学」として、地域密着に加え、国際的な視点に立って活動できる人材の育成に力を入れていきます。そうした観点から、「世界」をテーマにしてもいいかと考えています。こうしたテーマの見直しも今後の課題とさせてください。今日は長時間にわたって審査していただき、ありがとうございました。
「ちょっと目を大きく開けて」
審査員 角野 栄子
 エッセイは、日常のなかからさりげなく一シーンをとりだして、そこに自分の気持ちを重ねて、文字にしていくものと言ってもいいでしょう。沢山見ているものから、なにを、どう切り取るかが大切です。ジャスト・ワンシーンです。そこから、世界は広がり、自ずと意味が生まれてくるのです。今年もエッセイコンテストの作品を読みながら、私がこだわったのは作者の目が捉えた風景でした。若い気持ちはとかくテーマにこだわり、まずそこに飛びついてしまいがちです。すると自己主張ばかりが目立ち、読み手から読む自由を奪い、息苦しくさせます。飛びついてほしいのは、意味を隠している日常の風景なのです。それには目の技を磨かなくてはなりません。目をちょっといつもより大きく開いて、またいつもよりちょっと視点を変えてみる。すると平凡だと思った風景が輝きだし、新鮮な自分に出会うことができるでしょう。
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