「遅くまで頑張っているね。医学部目指してるんやって。気を付けて帰りぃや」。七時間目まで授業を受けて疲れた体で、とぼとぼ坂道を上っていた。あたりは暗闇が覆い始めていた。そんな時、わんパト隊のおばさんに声をかけられた。何気ない言葉だったがその言葉は―ちょうど寒い日のお味噌汁のように―私の心にしみわたっていった。 私の暮らす町には、わんわんパトロール隊、わんパト隊がいる。わんパト隊は犬の散歩をしながら、地域の安全を守る、という部隊だ。犬とおしゃべりが大好きな妹たっての希望で、三年前から、犬を飼い始め、以来、妹は部隊の一員だ。わんパト隊は散歩しながら、沢山おしゃべりをする。そのおしゃべりで培われる情報量はツイッターやフェイスブックにも負けていない。そう、私の行きたい学部までみんな知っているのだ。 将来の夢まで知れわたっているのは、年頃の私にとってちょっぴり恥ずかしい。けれども、何だか嬉しいことだ。家族だけでなく、自分のことを応援してくれている人がいる。それが、どれほど私の心の支えになっただろう。わんパト隊のおかげで、私の心は多くの人とつながっている。わんパト隊は地域の防犯だけでなく、地域の人の心をつなぐ役割も果たしているのだ。 最近、近所づきあいの薄さが大きな問題になっている。しかし、私の暮らす町では、わんパト隊を通して深いつながりができているように思う。確かに、ふんの放置などペットに関する問題も絶えない。だが、ペットを通してできるつながりもある。それは少しずつではあるが、近所の人同士の心がつながっていく手助けになると思う。 わんパト隊、それは地域の安全を守るため、心の安心を守るため、今日も出動中だ。
この作品もタイトルがいいですね。本文も難しい言葉を使わず、わかりやすくまとまっています。わんパト隊の皆さんの、そのまちに住む人たちに対する優しい気持ちがエッセイ全体から感じられ、最初から最後までほほえましい気持ちで読むことができました。作者の将来の夢までみんな知っていることが恥ずかしい反面、まちの人たちの心をつないでいることを嬉しく思っている気持ちが、よく表現されています。