36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2013年度 日本福祉大学
第11回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
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入賞者発表
第4分野 社会のなかの「どうして?」
優秀賞 広島の原爆資料館の人形展示について
同志社女子高等学校 3年 谷川 実

 私は最近、ある驚くべき事実を知った。広島にある原爆資料館の人形の展示がなくなる方向で動いている、というものである。驚くべきはその理由である。「子供が怖いと言うからなくす」といった内容だった。
 私は中学生の時、家族で広島に行った際、原爆資料館に行き、その人形を実際に目にした。私もその人形を見て、「怖い、恐ろしい」と感じた。赤黒く暗い広島の町を大火傷を負った人が逃げまどう、その光景を見て恐ろしいといった感情を抱くのは自然なことだと思う。実際、原爆は怖く、恐ろしいものだと、被爆者たちは語っている。数々の意見を見るなかで、「あそこだけお化け屋敷のような雰囲気」という意見を目にした。たしかに、実際に見た私も、その意見には少し共感できる部分もあった。しかし、そのお化け屋敷のような雰囲気と称されたあの光景は、実際に起こったことなのである。子供たちが怖いと言うからなくそう、ではなく怖いからこんな恐ろしい光景を生み出す原子爆弾を使ってはいけない、戦争をしてはいけない、とその人形を見て怖いと泣く子供達に伝える事が、被爆者からのあの資料を託された次の世代の使命ではなかっただろうか。私たちが原子爆弾の恐ろしさを一番リアルに感じる事ができるのは、申し訳ないがあの数々の貴重な写真や証言ではなく、あの人形を通してだと私は思う。
 はたして、子供が嫌だと言う物をとりのぞいて、暗い過去から目をそむけさせることが、本当に子供を守ることにつながるのだろうか。最近は、「子供を守る」というのを理由に公園から遊具がなくなったり、その公園が道路に沿っているせいでボール遊びなどを禁止したり、様々なものが変わってきている。私は、今の大人達が守りたいものは「子供」で、その「子供」の"未来"にはあまり目を向けられていないように思う。

講評

 作者の「どうして?」という気持ちがストレートに表現されていて、第4分野にふさわしい作品です。審査員一同、「子供が嫌だという物をとりのぞいて、暗い過去から目をそむけさせることが本当に子供を守ることにつながるのだろうか」と書く、作者の主張に共感しました。大人が子供のことを考えて配慮する気持ちもわかりますが、子供の判断力を信じて、逃げてはいけないと思います。作者の気持ちを全面的に後押ししたいと考えて、優秀賞に選びました。自分の考えを書くだけでなく、実際に作者自身が原爆資料館を見学した時に感じた気持ちを書いていることが、説得力をより高めています。

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