六月に行われた「語彙・読解力検定」に初めてチャレンジした。その受検対策のひとつとして私は、毎日欠かさず新聞を読んだ。赤ペンを片手に改めて新聞を精読してみると、いくつかの発見があった。 まずは、新聞に向かっている自分が確実に社会の一員であることを認識して、少し大人になったような気分を味わった。しかし、そんなのびやかな感情だけでなく、世の中のことに無知だった自分を思い知り、打ちのめされた思いもした。 この世の中にはなんと多くの問題が潜んでいるのだろう。政治や経済にもたくさんの課題があることを知ったが、とりわけ私の心に突き刺さったのは子どもをとりまく諸問題だ。貧困、虐待。海を渡れば紛争の犠牲になっている子どもたちがいる現実。私が家族と温かい食事を囲んでいる時も、学校で友人と楽しく談笑している時も、日本の、そして世界のどこかで孤独に泣いている、また声をあげずに苦しみもがいている子どもたちがたくさん、たくさんいるのだ。 なぜこのような悲劇が起こるのだろうか。 なぜ悲劇は繰り返されるのだろうか。 考えれば考えるほど私の頭は空回りして、ますます混沌とした。「このままではいけない、何とかしなくては。だって人は、誰でもその人らしい幸せを生きてほしいから」。私はこんな憤りに似た感情をもて余した。何をどうすれば良いのか、何の具体策も見出せず、悶々とする私に父が言った。 「無知だったことに気づけたこと、それこそが出発点。大丈夫、無関心からもう脱却したね」 無関心からの脱却。 父の言葉に私は励まされた。そう、私はもう考え始めている。今の私に出来ることは、社会の当事者として社会の中で考え続けていくことだと思っている。
評価が高い作品が多かった第4分野の中でも、作者の気持ちの変化や成長の過程が明確に書かれた良いエッセイだと思います。特に、お父さんの「無知だったことに気づけたこと、それこそが出発点。大丈夫、無関心からもう脱却したね」という言葉がいいですね。今まで悶々としていたこともあったでしょうが、お父さんの言葉に励まされて成長した作者の姿が、しっかり表現されています。毎日欠かさず新聞を読むことを通して世界に目を向け、これからもっともっと世界のいろんなことを知ることになる作者を応援したくなります。