36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2013年度 日本福祉大学
第11回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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入賞者発表
第1分野  人とのふれあい
最優秀賞 太陽の絵ハガキ
松本第一高等学校 3年 東 萌実

 「お姉ちゃん服かわいいね」。声が聞こえ周りを見わたす。さまざまな年齢の方がいる。養護学校の重度障がい者のクラス。自分の言葉で意志を伝えるのが難しい方ばかりだ。どこから声が? 不安に思い、ふりむくと、ベッドで横になり、ほほえむ女性と目があった。彼女と仲よくなった私は、三十歳年上の友達と文通を始めることにした。
 送られて来る手紙は、彼女の言葉を家族が代筆していた。文字を書くのは、困難なのだろう。けれども、彼女は絵を描くことが好きだった。ハガキの裏には、彼女が時間をかけ筆で描いたであろう水墨画が印刷されていた。色々な構図の、墨の激しいタッチで描かれた森。どの森の上にも、赤い太陽が昇っていた。絵の中の太陽は、彼女の笑顔そのものだった。文通を続けると、ハガキが多くたまったので彼女の絵を部屋に飾った。力強い太陽の絵ハガキを見ていると、元気がでた。「いつか彼女に個展を開いてほしい」と、思った。
 文通をしていると、お互いに好きなものが似ていて驚いた。クラシックやスポーツの話をした。彼女が好きなサッカー選手を写真に撮って送ると「ありがとう」と、とても喜んだ。私が悲しい時には、「負けないでください」と励ましの手紙を送ってくれた。私は、いつも「お身体ご自愛ください。またお手紙書きます」と書いて送った。
 そして、彼女から、ハガキが来ることは、一生なくなった。彼女へハガキを送ることも二度とできなくなった。悲しくて辛かった。もっと話したかった。後日、私が送ったハガキは、一度抱きしめてから、ベッドの横に飾って彼女はいつも見ていたと知った。
 今、私の部屋は、彼女の描いた太陽の絵ハガキで囲まれている。真っ赤な太陽を見ていると、彼女が「負けないで」と応援してくれている気になる。まるで小さな個展会場のようなその部屋には、彼女との日々が色あせることなく飾られている。

講評

 エッセイとしての完成度が高く、とても良い作品だと感じました。まず、タイトルが工夫されていていること。タイトルに使われている「太陽」が、エッセイの随所で効果的に使われていて、情景が目に浮かびます。構成もしっかりしており、とても読みやすかったです。そして、自分の体験をもとに具体的なエピソードを書いていて、『元気がでた。「いつか彼女に個展を開いてほしい」と、思った』『悲しくて辛かった』という様に、その時に作者がどんな気持ちになったかが書かれているため、文章全体がイキイキしています。そんな点が評価されて、最優秀賞に選ばれました。

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