僕の暮らす自慢の町。福山市御門(みかど)町。でも以前は違った。それは、子どもならまず、「みかど」と読めないのだ。だから、「どこに住んでるの?」と尋ねられたら、CMでもおなじみの隣町、「緑町」と答えたこともあった。しかし、“ピンクのお巡りさん”とのふれあいで、この状況が一変する。 蛍光色のピカピカ光るピンクのジャンパーにピンクの帽子がトレードマーク。僕たちが“ピンクのお巡りさん”と呼んだ理由だ。彼らは、地域を地域住民の手で守ろうと活動する見守り隊のおじいちゃんやおばあちゃんたち。 最初は、いっしょに下校するのが嫌で恥ずかしかった。僕は自分でも嫌になるくらいの人見知りで、ずっと無言で歩くことと、派手なピンク色に耐えられなかった。 そんな僕が変わった。それは、あるピンクのお巡りさん・Oさんに、「学校、楽しい?」と聞かれたことがきっかけだった。何を隠そう、僕は小学五年生までクロールで二十五m が泳げなかった。だから「水泳があるけえ、楽しくない」と答えた。するとOさんが、「息継ぎを素早くしてみい。絶対に泳ぎ切れるけえ」とアドバイスをくれたのだ。その言葉が僕に“自信”という名の魂を吹き込んでくれたと今でも思っている。 その日からお風呂で特訓。ついに二十五m を泳ぎ切った。達成感で満たされ、早くこのことをOさんに伝えたいと心が躍った。 「よかったね。私もうれしいよ」。Oさんからの言葉と笑顔。そのときの幸福感は言葉では表せない。僕はとってもハッピーで、心がピンク色になっていた。 高校生になって、会う機会がめっきり少なくなったが、先日、小学生と下校するピンクのお巡りさんに出会った。小学生もみんな笑っていた。「地域を守る」ということは、単に危険から守ることではないと思う。人と関わりを持ち、幸せを分かち合い、その環を広げることが大切な役割だ。 僕は、おじいさんになったら絶対にピンクのお巡りさんになると決めている。
タイトルの面白さに惹かれて、一気に読んでしまった作品です。「自分が住む町は自分たちで良くしていくんだ」という素直な気持ちが書かれていて、まちに対する愛着が伝わり、好感を持てました。体言止めを多用し、短い文章をリズム良くつなげて、個性あふれる文章に仕上がっている点も良いと思います。これで本文もタイトルのようなユーモアがもっと散りばめられていると、さらに良くなるでしょう。