2010年度 日本福祉大学 第8回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集 36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
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入賞者発表
第2分野 あなたにとって家族とは?
審査員特別賞 二つの家族
豊川高等学校 3年 関森 由花

 私の家は七人家族だった。それが、ある日突然変わった。両親が離婚した。当然子供の意見など聞くこともなく母との二人暮らし。とても厳しくしつけられた。働く母にすれば当たり前だったかもしれない家事手伝いは、小学生の私には苦行でしかなかった。そんな暮らしの中で、何万回母を憎んだことだろう。唯一の楽しみは父と弟との再会だ。小学生の時は休みも多く習い事も少ないので好きなだけ泊まりに行け、帰ってくる時は弟と一緒だった。そんな時は久しぶりに会えた弟を可愛がる母を見て、弟に嫉妬し、弟が邪魔になったりもした。
 母に再婚の話が出た。弟の面倒をみている父方の祖父母からは、いつでも息子に会いに来てあげてと言われて祝福されたらしい。家族や親戚が増えてにぎやかになるよと言われても、その時は期待より不安の方が多かった。
 知らない土地に引っ越して始まった五人の家族。新しい家族には、気を遣うのがとても辛かった。家を出て反抗する勇気もなく、ひたすら無視したり、部屋にこもったりしていた。けれど、考えてみれば良いことばかりの再婚ではないはずだ。子供三人分の学費、五人分の生活費の為に忙しく働く義父。それでも、家に帰れば母と楽しそうに話しをする。五人分の家事や洗濯、週五日のパートで働く母。町内の集まりの時には隣の園児に「今いくつ? 五歳なの? おばちゃんと一緒だね! おばちゃんも後妻なの!」とケタケタ笑いながら周囲に再婚した事をアピールしていた。そんな両親を見ていると、毎日を楽しんでいないのは私だけだと感じた。どんなに嫌がっても、今の生活が変わるわけではない。毎日を楽しく過ごすかどうかは自分次第なのだ。それまで、親に振り回された人生だと思っていたが、それは都合のいい逃げ道だったような気がする。離れて暮らす血のつながった家族と血のつながっていない家族。今はどちらも大切な私の家族だ。

講評

 両親の離婚・再婚という事実を自分なりにしっかりと受け止めて、どちらの家族とも付き合っていこうという作者の決心が伝わってくる作品です。最初は「苦行」だったり、「憎んだ」り、「嫉妬」するという暗い気持ちだったのが、「毎日を楽しく過ごすかどうかは自分次第なのだ」と吹っ切れた気持ちの変化がよく表現されています。「大切な私の家族」を二つ持てる思いを少し具体的な表現で表わしたら、さらに気持ちが伝わったのではないでしょうか。

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