新政権発足九ヶ月。七月十一日に国民の真意を問う参議院選挙が行われた。その結果に一喜一憂する政治家がテレビに映る。参議院議員一人当たりに支払われる年間費用、いわゆる年収は一億三千万円を軽く超える。そして六年間の任期に守られるのだ。自然と顔がほころび口角が上がるのも仕方ないだろう、と意地悪を言いたくなった。 私は高校二年生、十六歳。あと四年すれば選挙権を取得する。私も有権者になるのだ。それなのに事件は起きた。 「よろしくお願いします、マニフェストです。皆様のお声を国会へ。…あ、君は高校生だね。あっ、奥さんよろしくお願いします。」 私は完全に無視されたのだ。高校生だって未来の有権者。幼稚園児ではないのだから、マニフェストだって読める。内容だって理解できる。未来のために、と日本の税金で教育を受けさせていただいた。そして、二十歳の成人を迎え、日本国を運営する一人の人材となって行くのだ。それなのに! 私は心の中で叫んだ。 「ちょっと待て! 私達高校生だって有権者の卵、いや、さなぎにはなっている。蝶だけに目を向けていて政治はできるのか!」 生意気すぎるかな、と考えてみた。高校生にメディアのマイクは向けられない。高校生が日本の政治に物申す番組は今回の選挙報道番組にもなかった。それは有権者でないからなのだろうか。それとも精神的にも人間的にも成長できていないということなのだろうか。いや、頭ばかりが大きくなって自己中心的になっているのは確かだ。こうして私自身が偉そうなことを平然と言えるのだから。謙虚さや品格を問われても仕方ない。しかし、真剣に物事に取り組む姿勢は大人には負けていない。地道にこつこつ努力することも忘れてはいない。 さなぎは蝶になる。そして、社会に希求される真のリーダーになるのだ。
選挙や政治に対する疑問を書いた作品が少なかったこともあり、この作品を新鮮な感覚で読むことができました。十六歳の作者も四年後には選挙権を取得するにも関わらず、無視されたことに対する怒りは正当な主張で、第四分野にふさわしいテーマだと思います。なお、すでに選挙権を十八歳にしようという動きがあります。自分の怒りを起点として、それに関わることについても作品に反映させると、さらに深みのあるエッセイになるでしょう。