「今年の七夕も天の川を見ることができないね。」祖母と曇り空を見上げながらつぶやいた。 「でも最近は見える星の数も少なくなったね。」祖母の言葉を聞いて考えた。「そういえば、晴れた日でも天の川って見たことあったかなあ。」と。都会では夜間の街の明かりのせいで空が明るくなって星が見えにくいらしい。私達は、快適な生活を手に入れた代わりに、星だけではなくいろいろなものを失っているんだなとふと思った。暗い夜を明るく過ごすためにたくさんの電気を消費し、その電気を作るための火力発電などで二酸化炭素を放出し、温暖化や大気汚染の原因を作っている。そのために、絶滅の危機に陥っている生物がたくさんいる。人間にとっての快適さは、この地球にとっての負の連鎖を引き起こしている気がする。 今年は私達の住む名古屋市で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催されるが、地球には多くの生物がすみ、それぞれの生態系でそれぞれの役割を担っている。食物連鎖により生物間のバランスを保ち、生きるために必要な酸素は植物によって作られ、微生物による分解で水や土壌が浄化される。それは私達人間が作り出す「負の連鎖」ではなく、「正の連鎖」であり「生の連鎖」だと思う。 宇宙の中では、地球はほんのちっぽけな星だけど、そこには私達が生きている。こんな大きな宇宙の中でほんとに限られた星だけに与えられた特権だと思う。それを今私達人間が、破壊していいのだろうか。地球に生きているものすべてが、地球という家庭の中の一員であり、お互い協力し合い、尊重し合わなければいけないと思う。そして宇宙の中で一番美しい地球を守り続けなければいけないと思う。「どうか家族みんながしあわせに過ごせますように。」七夕様にそっと願った。
「問題提起」という観点から言えば他にも良い作品がありましたが、エッセイとして読んだ時、「いいエッセイだ」と素直に思いました。それが、審査員特別賞に選ばれた理由です。「最近は見える星の数も少なくなった」「星だけではなくいろいろなものを失った」「COP10が開催される」といった具体的な内容が書かれている点が良いと思います。「七夕に天の川を見ることができないね」という出だしが良かったので、途中でも作者の独自の視点や考えを書くことができたら、さらに良い作品に仕上がったと思います。