優れた作品が多かった第一分野の中でも、審査員全員が高い評価を付けた文句なしの最優秀賞です。また、第一分野では電車の中でのふれあいを描いた作品が数多くありましたが、その中でも秀逸な作品でした。電車で出会ったおばあさんの優しい人柄と作者の素直な心情が読者に伝わってきて、読んだ後に温かい気持ちになれました。そして、「もっと頑張れ!」と言われっ放しの毎日で、ちょっと反抗的な気持ちになる高校生の心情がしっかり表現されていたり、車内の様子やおばあさんとの会話といったディテールがよく書かれていて、情景が手にとるようにわかる点が、高く評価されました。最後の「私はおばあさんが見えなくなるまで手を振りました」という部分も、作者の温かい気持ちが伝わってきて良かったと思います。