「故郷の川にて」
帝京ロンドン学園高等部 3年
武藤 浩平
砂利道を自転車でかっとばして行くと、もう皆待っていた。自転車を乗り捨て、走りながら上着を脱ぐ。ズボンも脱ぎパンツ一丁の状態になり僕は川へ飛びこんだ。体に刺さるような冷たさが走り、最高に気持ちいい。約5キロの山道を自転車で走りつづけた汗もいっきに洗い流され、まるで自分が魚になったような錯覚にとらわれる。川に行くとたいてい僕たちは、銛で魚を捕まえる。捕まえた魚は金網で焼いて皆で食べる。それがまた最高にうまいのだ。魚を食い終わると今度は、日が暮れてへとへとになるまで野球をする。泥々になったら川に入って体を清めてバイバイ。
中1の時は、だいたいこんな毎日だった。中2になると、反抗期に入ったせいか、僕らは危険を求めるようになった。自転車でそのまま川に入ったり、橋の上から飛びこんだり。
毎日怪我つづきで、骨折する奴とかも出てきた。そんな中、僕らのチャレンジはどんどんエスカレートしていった。ある日、台風が町に来て学校が休みになった。最初、僕らは家でボーとしていた。が、そのうち誰からともなく、川へ行こうという事になった。川に着くと、川はいつもの僕らの遊び道具ではなく、茶色く変色して、いつもの倍以上の急流になっていた。皆怖気づいていたが、勇敢な一人の友達が浮輪を持って飛びこんだ。その瞬間、一気に押し流され、皆あせって助けようとしたがどうしようもなく、僕らはただ助けを叫ぶ事しかできなかった。すると近くにいたおじさん達が助けてくれ、事なきを得た。怒られている間中、僕らは泣いて謝る事しかできず、その日を境に僕らの反抗期は幕を閉じ、また一歩大人になったのであった。
今僕は日本を離れ、英国で高校生活を送っている。ここにいてふと寂しくなった時思い浮かぶのは、故郷の川での思い出の数々だ。それらは、もうすぐ子供とは言えなくなる僕の生涯の宝になる事を、今感じ始めている。この夏休み、またあの川を見に帰るのが楽しみだ。
「外国に行って日本の良さを見直した」という作品がいくつかあった中で、川でどんなことをしたかをいきいきと具体的に書いてある点がよかったです。自分の体験に根ざした内容で、「またあの川を見に帰るのが楽しみだ」というストレートな気持ちが伝わってきます。文章のきめ細かさが十分でないところもありますが、男の子らしい勢いを評価しました。
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