2007年度 日本福祉大学 第5回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集 36c
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
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審査員の評価と感想

年々レベルが向上していますが、分野によって差があったのが残念です。

エッセイコンテストも5回目。今年は今までで最多の応募点数があり、海外からの応募作が何点も最終選考に残りました。全体的なレベルが高まった反面、突出した作品が少なく、審査員の意見が大きく分かれることがあまり無かったことが今年の特徴です。審査をしていて感じたことを5名の審査員に話し合っていただきました。

審査員プロフィール


応募点数が増え、全体的なレベルも高い。

宮田 応募点数は昨年の7000点程度が上限かと思っていましたが、今年は昨年を約2300点も上回る9673点という多くのご応募をいただきました。今年は応募要項の発表を例年より半月くらい早めたため、学校の先生方が年間の授業計画の中でエッセイを書かせる時間を取りやすかったのかもしれません。団体応募が増えたのが今年の特徴です。
川名 数が増えただけでなく、全体的なレベルも上がったと思います。昨年も思ったのですが、最近の若い人はコミュニケーション能力が落ちたとか、文章力が落ちたとか言われますが、最終選考に選ばれた作品を読んでいますと、若い人たちの表現力はまだまだ捨てたものじゃないなと感じました。
神田 私は今年が初めての参加ですが、川名先生と同様に、全体的に水準が高いと感じました。きちんと書き言葉で書かれていて、心打たれる作品がいくつもありました。


もっと周りに目を向けて欲しい。

杉山 ただ、四つの分野で見ると、分野ごとの差を感じました。第1分野と第2分野は、「たぶんこの作品が高い評価を受けるだろうな」とだいたい予測できましたが、第3分野と第4分野はどれを選んだらいいか迷うくらい、「これは!」という作品がありませんでした。テーマによって踏み込み具合が違うんでしょうね。
宮田 やはり、頭の中だけで考えた作品より、自分で実際に体験したことを素直に書いた作品の方が「36℃」の体温が伝わってきますね。ただ、素材はいいけれど、表現する力が足りない作品もありました。表現を練り上げるために、もう少し頑張って欲しいですね。
川名 今回は、各分野とも突出した作品がありませんでした。たぶん、今の高校生は生活範囲が決まっていて、新しい体験をする機会が減っているんだと思います。第3分野の「わたしが暮らすまち」の応募点数が他の分野より少ないのも、「自分が暮らすまち」と「ほかのまち」を比較する機会が少ないのでしょう。海外からの応募で最終選考に残った作品も何点かあり、海外で異文化と出会っておもしろい体験をしたことが、エッセイに反映されているのだと思います。
角野 似たような内容の作品が多かったのも、生活範囲が狭いことと関係しているかもしれませんね。時計の針をグッと戻して振り返り、現在の自分の経験の話になり、未来はどうすべきか……というパターンがいくつも見られました。同時代を生きている他の人のことや、世界の動きなどを見ているのかなって疑問を感じます。
神田 そのせいか、「たぶん、こういう結末になるだろうな」と予測が付く作品が多かったような気がします。高校生らしい感性を強く感じられる作品が少なかったのが残念です。文章の完成度も大切ですが、その人でなければ書けない作品や、勢いのある文章には好感を持ちます。
宮田 同じ様な内容の作品がいくつもあると、一番完成度の高い作品が選ばれて、二番目以降は審査員の評価点では上位に上がっていても、選外になってしまいがちです。自分なりの視点が大切ですね。
川名 他の人が気付かない面白い視点の作品があると、新鮮な印象を受けて、高い評価になりますからね。
杉山 第4分野の最優秀賞に選ばれた「私達の思い」を読んで、最近のサービスの変化を改めて感じて、「こういう時代になったんだ」と、驚きがありました。また、入選作には選ばれませんでしたが、第1分野の「人とのふれあい」で携帯電話を使ったコミュニケーションの話があって、時代を感じさせる作品があったことも印象に残りました。
角野 状況描写や登場人物の会話を通して、状況が目の前に浮かんでくる作品がいいですね。


敢えて難しい漢字を使う必要はない。

川名 今回気になったのは、難しい漢字を使っている人が何人もいたこと。ワープロではなく、手書きの作品でしたから、たぶん辞書を引いて調べたのでしょう。でも、普段使わない漢字を無理して使う必要はないと思います。
角野 パソコンやワープロで変換が容易なせいか、私たちが見たこともないような難しい漢字を使っている人がいますね。
杉山 今風の表現も気になりましたね。また、普通ではあまり言わない言葉を使っている作品もありました。友人のことをいう時も、親しみをこめてというより、乱暴な言い方になってしまっているのが気になる作品もありました。
角野 「目の前にでっかい山」と書いた作品がありましたが、地の文では「でっかい」という話し言葉は、普通使いませんね、また、自分が感じたことだから「私は」でいいのに、「私たち」と書いてあって違和感を感じる作品がいくつかありました。
神田 私は、「!」を多用した作品があって、気になりました。
宮田 説明不足の作品も目に付きましたね。「登場人物がどんな人なのか」、「その場所はどんなところなのか」「なぜ、そうしたのか」……といった説明をきちんとするとわかりやすくなるだけでなく、話に奥行きが出てくると思います。
神田 エッセイや作文のように文章を書くコンテストでは女性の入賞者が多くなるのですが、今回は4名の男性が入賞しており、男子も頑張っているという印象を受けました。
宮田 本日は長時間にわたって熱心に審査をしていただき、ありがとうございました。
 

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