「介護の商品化」
田園調布学園高等部 3年
村上 由香
私の母は3年前にヘルパー2級の資格を取った。今は亡くなった、母の実父がパーキンソン病を患ったためだ。
母は資格を取ると、実際に働き始めた。母が担当したのは、日常生活に杖が必要な足の不自由なおばあさんだった。ヘルパー2級では医療行為はできないので、家事援助とトイレの介助、病院への通院介助、足をさすってあげることぐらいだが、そのおばあさんはとても喜んでくれたそうだ。日中、テレビを友とする暮らしの中で、彼女は母がやって来るのをいつも楽しみにしていた。母もやりがいを感じていた。
しかし、母は仕事をやめた。実父が亡くなったこともあるが、それだけではない。賃金が低すぎるのだ。例えば、ヘルパーは介護者の家までの交通費を認められず、勤務時間にも入れてもらえない。母も自転車で通勤していた。また、通院介助も、母がおばあさんの診察が終わるのを待っている時間も、やはり対象外にされてしまう。病院でトイレ介助を行なってもだ。これは、ひどいと思う。医療行為ができないからと言っても、家事だって重労働だと思う。車イス一つ押すのも、私たちが考えているほど簡単ではない。それなのに、なぜこんなにもヘルパーへの待遇が悪いのか。
介護は奉仕と考えられやすい。しかし奉仕だけでは介護は続けられないのだ。ヘルパーの離職率は20%ときわめて高い。
最近の介護サービス提供会社の破綻を見て思うのだが、会社は介護を一つの商品として考えていないだろうか。だから、賃金も低く抑えようとするのではないか。会社と現場の介護への考えが食い違っているように感じられる。介護は単なる商品でも奉仕でもない。もっと人間的なものであり、ヘルパーはもっと優遇されるべきだ。超高齢化社会へと進みつつある今、介護に対する認識を変えていくことが、まず何よりも大切ではないか。
ヘルパー2級の資格を持っているお母さんを通して、介護に対する憤りをストレートに表現しています。現代的な問題をうまくすくいとってエッセイにまとめている点がいいですね。ただ、作者のおじいさんが病気をわずらったことがお母さんのヘルパー2級の資格を取るきっかけのようですが、おじいさんの介護をどうしたのかについて触れられていないのが残念です。
|
▲UP
|
Copyright (c)2007 Nihon Fukushi University. All rights reserved. 本ホームページからの転載を禁じます。