36℃の言葉 あなたの体温を、伝えてほしい。 2006年度 日本福祉大学 第4回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞発表
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
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審査員の評価と感想
年々優れた作品が多くなっていると実感。新鮮な視点もたくさんあり、読んでいて楽しく感じました。

四回目を迎えたエッセイコンテストの最終選考。それぞれの審査員が大きな感銘を受けた作品を強く推す光景も見られるなど、今年も議論は白熱。そんな審査の過程と作品に対する感想を五人の審査員に語っていただきました。

審査員プロフィール


座談会イメージ 突出した作品は少なくても、読み応えのある作品が多かった。

宮田 エッセイコンテストも四回目を迎えて定着したようで、今年も七〇〇〇点を超える多くの作品が集まりました。
川名 最近の若い人は本を読まない、文章を書く機会が少ないといった声をよく聞きますが、このコンテストに応募されたエッセイを読む限りでは、若い人もよく考えているし、文章もしっかり書けていると感じ、安心しました。
杉山 そうですね。そして、今年は昨年と比較して「いいな」と思った作品が多かったような気がします。
角野 それは私も感じました。優れた作品が多かったので、読んでいて楽しかったですね。
川目 私は今回初めて審査員になりましたが、文章を読んだり書いたりする仕事に日常的に関わっているわけでもないので、若い人の作品に新鮮な感銘を受けました。
宮田 私も今年の作品には読み応えのあるものが多かったと思います。しかし、平均的なレベルは上がった一方で、群を抜いた作品が少なかったという印象もあります。今までは各分野で「これは」という説得力のある作品がありましたが、今回の選考の過程では、誰もが「これは優れている」と認めるような作品はあまりなかったように思います。それが少し残念です。


実体験を表現した作品が多かった。

杉山 今年の作品を読んでいて感じたのは、実体験を書いた作品が多かったこと。頭の中で考えただけではなく、「あるできごとをきっかけにこうしました、こう考えました」という作品が多く見受けられ、好感を持ちました。
川名 たとえささやかなことであっても、やはり実体験に裏打ちされているものは説得力がありますね。
川目 大きなできごとであっても、ささいなできごとであっても、その体験について自分の中でそしゃくしたり、次のアクションへのきっかけにした作品を、私も高く評価しました。
角野 ただ、今回の作品の中に発展途上国に研修旅行等で出かけていった時の体験を書いたものがいくつかありましたが、2〜3日そこで過ごしただけで「触れ合った」「相手の気持ちをすべて理解した」と安易に考えてほしくはないですね。表面からは見えない相手の心の奥の痛みまで感じて、それを表現してほしいと思いました。私は終戦直後の日本が貧しかった時代を体験していますから、発展途上国の子どもたちの気持ちも多少理解できるのですが、豊かな日本で生まれ育った若い人たちにそれを期待するのは難しいかもしれません。しかしそこまで踏み込まないと、上っ面な触れ合いや自己満足で終わってしまいがちです。
杉山 実体験はよいのですが、その体験にどう起承転結を付けて文章にまとめるかを一工夫した方がよかったなと思った作品がいくつもありました。これは、指導者の影響もあるかもしれませんね。「これは先生が指導しているな」という作品と、「そうじゃないな」という作品が、読んでいて比較的明瞭に判断できました。先生の指導が行き届いている学校から送られた作品は、そうした構成がしっかりしていると感じました。
宮田 本人にとってはわかっていることだから何も書かれていませんが、ここをもっと説明してほしいと思う作品がいくつかありましたね。
川名 「こうした」という事実だけでなく、私たちが知りたいのは「登場人物と作者の関係の深さ」であったり「そこでその人がそうしたのはなぜ?」ということなのに、それが書かれていない作品が多いですね。たとえば、声をかけてくれた人が知り合いのおじさんなのか通りがかりのまったく知らないおじさんなのかでは、作者の気持ちもずいぶん違ってくると思います。そこをきちんと表現すると、エッセイの内容がさらに深まります。素材となった体験はよいのに、残念です。
角野 構成力や文章力といったその人の持っている資質と、暮らしの中で感じたことや出会ったできごとがうまく融合すると、いい作品になりますね。そういう意味では、今年は読んでいて風景が目の前に広がる作品がいくつもありました。


重いテーマが明るく書かれているとホッとする。

川名 昨年までの作品でも「高齢社会」を取り上げた作品は多かったのですが、今年初めて「認知症のお年寄り」を取り上げた作品が最終選考に出てきて驚きました。そういう人が身近に増えてきたことの表れなのでしょうね。
角野 第一分野の「人とのふれあい」や第二分野の「あなたにとって家族とは?」をはじめ、各分野でおじいさんやおばあさんの死や高齢社会の悲惨さを取り上げたエッセイがたくさんあって、それはそれで重要な問題提起をしている作品も少なくないのですが、元気で明るいおじいさん・おばあさんの話が出てくるとホッとしますね。
川名 元気に生きて、社会に積極的に参加する明るい高齢社会もあるのだというエッセイはいいですね。
杉山 障害者の方からの応募も数多くあるのですが、今年は体重880gで生まれて、脳性マヒで左手の肘しか動かせない方からの応募がありました。残念ながら賞の対象にはなりませんでしたが、私たちも読んでいて勇気をもらいました。
川目 今回初めて最終選考に参加して感じたのですが、全審査員がおしなべて高い評価をしている作品ももちろんありますが、評価が分かれる作品も数多くありました。エッセイというのは、読む人の価値観によって評価が異なりますから、そこが難しいところでもあり、おもしろいところでもありますね。単純に審査員の点を合計した予備資料ではそれほど上位でなかった作品でも、審査会で強く推す審査員の話を聞くうちに「この視点はいいね」と評価が上がり、審査員特別賞に選ばれた作品もありました。「悪くはないが、特筆する部分も無い」という作品より、多少荒削りで問題点があっても、それを超える個性や魅力のある作品の方が心を打つのだと思いました。
宮田 本日は長時間にわたって熱心に審査をしていただき、ありがとうございました。


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