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「陸の孤島の郵便局」 |
北海道立留萌高等学校 三年 中山 友希 |
「おはようございます。郵便でーす」
今日もこの地域には、郵便局員の声が響く。
「今日も暑いねぇ。マムシが出そうだねぇ」
「そういえば、この前あそこのおばあちゃんがケガしたらしいよ」
何もないこの北海道の雄冬という小さな地域の情報は、郵便局の人たちが運んでくれる。長く陸の孤島と呼ばれ続け、トンネルができるまでは、船で他の町に行くしか手段がなかった。住民のほとんどは七十歳以上の高齢者で、小学生のいる家庭はたったの一軒。小中学校は、二人の教師の子供で成り立っていた。私の父はその教師の一人で、私は中学校二年生の時にそこで暮らしていた。結局、学校は閉校となり、私がそこで過ごした時間は、わずか一年間だけだった。
しかし、雄冬を去って三年以上経った今、気になっていることがある。最近問題になっている、郵政民営化のことだ。今雄冬にある公共の場といえば、郵便局くらいしかない。そこはただ手紙や小包を送るだけの場所ではなく、皆の憩いの場、情報収集の場でもあったのだと思う。利益を考えたら、とうてい成り立つ土地ではない。もし今、この郵便局がなくなってしまったら、ここに暮らす人々はどうなってしまうのだろう。バスは朝昼夕とたったの三往復しかなく、年配のおじいちゃんたちは、まさか自分が生きているうちに道路ができるなんて思っていなく、車を運転できる人は少ない。だから、ちょっと隣町の郵便局まで、なんて簡単にはいかないのだ。
この問題は難しくて、私にはよくわかっていないというのが本当のところだ。でも、もし利益のことばかりを求めて、困る人たちが増えてしまうなら、私は決して良い法案とはいえないと思う。どんな時も利益優先ではなく、地域のための赤いポストの郵便局であってほしいと願っているのは私だけではないと思う。少しでも皆が住みやすい環境になればいい、そんな風に思う。 |
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話題になっているテーマを取り上げた着眼点はよいと思います。「皆の憩いの場、情報収集の場でもあったのだ」という郵便局の状況がわかりやすく描かれています。しかし、理屈っぽい内容になってしまった気もします。作者自身はどのように郵便局を使っていたのか、郵便局での具体的なエピソードなどを盛り込めば、さらにイキイキした作品になったのではないでしょうか。 |
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