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「繋ぐ心、伝える伝統」 |
新潟県立佐渡高等学校 三年 霍間 郁実 |
夕日に照らされた赤い景色、響く太鼓の音、かん高く歯を打ち鳴らす獅子、そして、それらに囲まれて踊る鬼。
これは、我が佐渡市に伝わる有名な郷土芸能、「鬼太鼓」だ。鬼の持つバチを狙う獅子と、バチを渡すまいとする鬼が、太鼓の音に合わせて所狭しと舞い踊る。
私の集落では、毎年四月に鬼太鼓の祭りが開かれる。三度の飯より鬼太鼓が好きな私は、小学生のころから裏打ち(太鼓を打つ人)として青年会のメンバーに混ざり、鬼太鼓に参加している。朝の四時から夜の一時までバチを握り続けるので、指は筋肉痛でこわばり、マメは次々につぶれて血がでる。それでも打つことをやめない私は、本当に鬼太鼓が好きだ。
しかし、一つだけ悔しいことがあった。祭りの最後を締めくくる舞いの時に、女は打ってはだめだと毎年言われるのだ。一時間に及ぶその舞いの迫力は、見ているだけで圧倒される。その最高の舞いに合わせて太鼓を打つことができたら、どんなに気持ちいいだろう。
そこで私は、一念発起した。こうなったら誰よりも上手な打ち手になって、絶対に認めてもらおう、と。毎日練習し、上手な人から教わり、誰よりも打った。気付けば、多くの人が味方になってくれていた。
そして、高校一年生の春、ついに私は太鼓を打つ許可を得た。緊張よりも、憧れの場所で打てるという喜びが湧きあがってきて、精一杯打った。最高の気分だった。
その舞いには、夜中にも関わらず多くの人が集まってくる。青年会のためにごちそうを作り、マッサージをし、共に祭りを作った集落の人々だ。私の集落は、鬼太鼓を通して人々が繋がっている。祭りの成功のために、皆自分の役割を持ち、支えあっている。それは、佐渡だからこそできる、大切な絆だと思う。
私は、鬼太鼓を伝え続けてきたこの島が好きだ。次は私が、鬼太鼓を受け継いでいく。
そして今年も、私はハッピ姿でバチを持つ。 |
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自分が住むまちに伝わる鬼太鼓に対する熱い思いや、自分もそこに加わりたいと思って努力している姿がよく伝わり、好感が持てました。とても具体的に書かれていて、作者が「まち」にどうかかわっていきたいかがよくわかります。「女は打ってはだめだ」と言われたのはなぜか、どうして許可が得られたのか、についてもう少し説明があってもよかったと思います。 |
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