あなたの体温を、伝えてほしい 36℃の言葉 2005年度 第3回高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集

学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
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入賞者発表
第2分野 あなたにとって家族とは?

優秀賞 「ひとつになれた」
山梨県立身延高等学校 三年 近藤 愛華

 私の将来の夢は看護師になること。今は、高度な医療技術で、どんな病気も治療出来るようになってきている。でも私は、患者さんを心から癒すことの出来る看護師になりたいと思っている。
 数年前、私たち家族は、ひとつになれる貴重な経験をした。とても辛い毎日だったけれど、家族の絆が深まったと心から思う。
 私の父は、実姉に肝臓の一部を提供した。生体肝移植のドナーとなったのだ。その時、伯母は、すでに「このままだと、あと半年の命だろう。生体肝移植しか方法は無い」と医者から宣告されていたという。父は、毎週のように東京の病院へ精密検査を受けに通った。診断結果は…適合性あり。父は実姉に肝臓を移植することになった。それからというもの、休みのたびに輸血のための血液を採りに、甲府まで通った。少しでも良い肝臓を提供出来るようにと、好きなお酒を我慢し、夜は母と二人でウォーキングをした。精神的にも、不安や恐怖で夜も眠れない日々だったと思う。私たち家族も、もし万が一のことがあったらと思うと、正直「移植しないで」と言いたかった。でも、頑張っている父を応援し、少しでも元気づけ、安心させてあげようと笑顔を絶やさず毎日を過ごした。家族全員が父の為に笑った。隠れて泣く事もあったけれど。
 手術は無事成功し、今では父も仕事に復帰している。あと半年の命と言われていた伯母も元気に生活している。父の勇気にはとても感動した。何より、家族みんなが協力し、励まし合い、ひとつになれたことが嬉しかった。私はこんな家族が大好きだ。うるさいなぁと思うこともあるけれど。自分の夫を辛い顔見せずに支えた母、父が入院しても不安がらないようにと写真と手紙を贈った弟たち、自分の娘と息子を励ました祖父と祖母。私は、こんな家族を大切にしていきたいと思う。そして、みんなのことを支えていけるような看護師になりたい。


講評
 父親が生体肝移植のドナーになるという特異な体験ですが、それをきっかけにさまざまなことを考えるようになった作者の気持ちがよく描かれています。移植前後の父親の具体的な描写や家族の一体感の表現にとどまらず「将来の夢は看護師になること」と、自分の夢にしっかり結びつけている点が、この作品の大きな魅力。全審査員から高い評価を得た作品です。
講 評


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