あなたの体温を、伝えてほしい 36℃の言葉 2005年度 第3回高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集

学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
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入賞者発表
第2分野 あなたにとって家族とは?

審査員特別賞 「私の両親を紹介します」
愛媛県立川之石高等学校 三年 中村 理恵

 私は両親、そして妹と弟がいる五人家族だ。どこにでもいるような平凡な家族だけれど、他とは少し違う所がある。それは、両親が健聴者ではないということ。私の両親は二人とも小さい時に病気で耳が聞こえなくなり、手話で会話をしたり、ほとんどは口の動きを読みとって聞いたりしている。
 小さい頃は、自分の親が人と違うとは全く思っておらず、口を大きく開けて話したり、身ぶりで考えを伝えたりすることに少しも抵抗を感じなかった。むしろそれが普通だと思っていた。しかし、小学校の高学年になるにつれて、家族ではない人の前で親に手話を使って話すことが恥ずかしくなり、自分の親が耳が聞こえなくて「人と違う」という事を知られたくないと思うようになった。頭では長女の私が親を支えないといけないと分かっているのに、手話を使わなかったり、普通の人に話しかけるように話したりしていた。ある時、「私が耳が聞こえないのが恥ずかしいの」と真剣に母に言われたことがある。その時はとてもショックで、それまでの自分が両親にとっていた態度を振り返り、一番支えにならなければいけない娘の私がどれだけ両親を傷付けていたのかと思うと、自分がどうしようもなく腹立たしかった。
 しかし今、私は誰が見ていても親にきちんと手話で伝えることができるようになった。親を恥ずかしいと思ってた自分はもうどこにもいない。今は逆に歌を歌う時に手話を使ったりして母にうっとうしがられる程に手話を使うようになった。
 「お父さん、お母さん、あの時はごめんね。私は幼すぎて、知らない間にたくさん傷付けてしまってたね。これからは自分の親を恥ずかしいなんて絶対に思わないよ。お母さんに、もう二度とあんなことは言わせない。障害をもって生きていくことはとても大変なことだよね。まだまだ未熟な私だけど長女として支えになれるように頑張るから、これからも仲良くしようね」


講評
 作者が両親との関係を真剣に見つめ、つまずいたり乗り越えたりしてきた成長の過程がしっかり描かれています。作者の両親に対する思いがよく伝わってきますが、欲をいえば家族以外の人との出来事など、具体的なエピソードが書かれていればもっと印象の強い作品になったと思います。
講 評


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