あなたの体温を、伝えてほしい 36℃の言葉 2005年度 第3回高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集

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入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
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第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
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入賞者発表
第4分野 社会のなかの「どうして?」

優秀賞 「食べること、生きること」
鹿児島県立市来農芸高等学校 二年 坂口 彩

 日本は先進国だという。
 特にここ最近のサービス業の発達は、私達にもわかる程に著しい。幼い頃無かったコンビニエンスストアが増え、携帯電話が大きく普及した。
 私は以前、あるコンビニエンスストアでアルバイトをした。そこで一つ、驚いたことがある。大量入荷したおにぎり、弁当、デザート類は定刻になれば、容赦なくドカドカと捨てていくのだ。もちろん、食品なので賞味期限を過ぎれば売り物にならない。だが、レジ横にある保温ケースに入ったコロッケ等の中には、二時間周期で捨て、補充分を作り、また二時間毎に捨てるものまである。どの家庭でも夕飯の残りを朝食べたりするだろうに、これでは徹底した品質管理というより、ただの贅沢な無駄遣いでしかないではないか。落としたり、異物が入っていたわけでもないのだ。夏場の生魚じゃあるまいし、そんなに早く劣化するはずがない。もしこれを難民の人達に配れば何人の命が明日へ繋がるだろう。
 果たして「食」とはこんなにも軽いものだっただろうか。肉にしろ、野菜にしろ、一つの命だったことを、私たちは忘れてしまってはいないか? 私は今、農業を学んでいる。野菜もそうだが、特に肉となる動物の世話に休みなどない。雨天晴天関係なく、水と餌を換え、除糞し、小屋を洗う。一日でも怠ると動物は病気しやすくなり、最悪、命を落とす。農家の方々がここまでして育て上げた命を、そんな簡単にゴミ扱いしていいのだろうか?
 確かに私たちの生活はより豊かに、便利になっている。だが、私達は生きる上で最も大切な食べること、生きること、の大変さと有難味に鈍感になってしまった。
 今、世界では三秒に一人の子供が死んでいる。この貧富の差を均し、みな平等に、平和に暮らせるよう私達でできることからはじめたい。


講評
 コンビニエンスストアでアルバイトをした個人的な体験をもとに、自分自身で考えを深めている点を評価します。作者が農芸高等学校に通い、将来は農業関係に進むのだろうということを考えれば、第四分野にふさわしいテーマといえるでしょう。後半は理屈っぽさが少し気になりますが、作者の憤りがしっかり伝わる文章です。ただ、最後が無難なまとめになってしまった点が残念です。
講 評


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