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「この小さな道をたどって」 |
立命館慶祥高等学校 一年 尾野 亜裕美 |
パン! 銃声かと思うような激しい破裂音をたて、一台の車が私の横を通っていった。一体何事か。ふと見ると、車の通った後に、空のペットボトルが一個転がっているのに気づいた。車がひいたのだ。そして気づくと同時に、突然、道にある他のいろいろなものもパッと目に入ってきた。たばこの吸いがら、らく書き、ガムを吐き捨てた跡。そしてそれらの暗い表情を何気なく無視していた自分。
こんな道でいいのか。
私は以前、ニュージーランドに短期間滞在し、その国の「道」の姿に驚かされたことがある。
「Hello.」「Hi.」
たくさんの人と知り合いなのだなあ。そう感心するほど、一緒に買い物に行ったキャロリンさんは、誰かとすれ違うごとに簡単な挨拶をしていた。こちらから声をかける時もあるし、相手の方からしてくれる時もある。不思議がる私に、彼女は明るく教えてくれた。
「今の人たちは、みんな知らない人よ。ここでは、誰にでも『Hi.』って言うの」
とっさに思ったのは、「えっ、どうして」ということ。そして、「なぜ“どうして”と思うのだろう」ということ。
後で、自転車で走ってきた女の人と目が合い、恐る恐る「Hi.」と言ってみた。木漏れ日を集めた、ささやかな笑顔が返ってきた。
「Hi!……」
単なる“通路”としてとらえがちだけれど、道は、名前も知らない多くの人が歩き、すれ違う共有の場だと思う。他の人を存在しないかのように扱い、ぶつかっても無表情、ゴミを捨てる、らく書きをする。その光景は、この国全体を表しているように思えてならない。大きな問題が目立つほど、小さな原因は目立たなくなる。でもせめて、多くの人と同じ場所を生きる意識を持ち、進んでいくことはできるのではないか。
キャロリンさんの言った言葉を、いつか私も、あたり前のように口にしてみたい。 |
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作者が問題意識をもって社会を見ている気持ちがよく伝わり、好感のもてる作品です。「道」で話をまとめた点も新鮮でよかったと思います。書き出しの二行が読む人の興味をひき、高く評価されましたが、「木漏れ日を集めた、ささやかな笑顔」といった表現は、わかりにくいように思われます。 |
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