あなたの体温を、伝えてほしい 36℃の言葉 2005年度 第3回高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集

学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
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入賞者発表
第1分野 人とのふれあい

優秀賞 「走れー!!」
和光高等学校 一年 寺本 ららら

 「走れー!!」
 わが高校の一大イベント、初めての体育祭は私にとって拷問のはずだった。
 私は生まれつき脳性マヒで杖を使っても貧相な歩き方なのにサッカーをするなんてありえない!
 体育祭は前半が総当り、後半がリーグ方式。
 私のチームは、総当りで全敗。「松・竹・梅」のうちビリの梅リーグ配属となった。あまりの弱さに「どうせなら梅ブービー狙おう」と苦笑。
 それなのに梅優勝だ。「選手」全員で勝ち取った優勝だ。やったー!!
 でも、私の涙腺が故障したのは梅優勝したからだけじゃない。皆が私のために真剣になってくれたからだ。
 障害者ルール会議は、チームメイト同席と言われた。
 心配!皆は戦力外の私のために、この、いかにも面倒な会議に出てくれるかしら?ところが会議のチームメイトは真剣そのもの。
「らららがボールを持ったら10秒間はだれも触んないっていうのにすれば?」
「嫌だ、私に有利だから」
結局、「らららは真直ぐ歩けないから杖に当たってもファール取らないようにしようよ」というものに決まった。
 私は小学生の時、徒競走で走る距離が皆の半分というハンデが引け目だった。でも、特別ルールはハンデではない。皆が対等に参加するためのものだから私に有利になるわけではなく相手の不利にもならないのだ。胸を張れるルールは初めてだった。
 梅リーグの準決勝。勝ったら決勝だ!と、皆の盛り上がりは最高だった。
 「いけ!」「蹴って!」「ナイスカット!」クラスメイトの声援の中、接戦から外れたボールが、私の前へ。 応援ラインから、サッカー部男子の指示が飛ぶ。
「ららら走れー!!」
 走れって私!?戸惑いながらも、必死に走った。他の子でなく私に「走れー!!」って言ってくれた。認められたんだ、私が!もう戦力外じゃない!私が「選手」になった瞬間だった。
 決勝前、審判が背番号読み上げでスタメンを確認。
「19番、寺本ららら!」
私の大きな声が五月晴れの空に響いた。「はい!」


講評
 文章がイキイキしていて勢いがあり、サッカーの光景が目に浮かんで、とても気持ちよく読めました。「杖に当たってもファール取らないようにしようよ」といった具体的な記述があるように、実体験に基づいた作品だからこそ、印象も強いのでしょう。最後の一行もとてもよいですね。ただ、前半に「優勝」という結論を書いたため時間の流れが乱れ、わかりにくくなりました。構成を工夫すればより効果的になるでしょう。
講 評


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