|
|
|
「命を抱く」 |
立教女学院高等学校 二年 安藤 瑠衣 |
熱くて重く、ミルクの匂いがした。
私は、高校のボランティアグループに入っている。その活動として、月に一度、近くの保育園へお手伝いをしに行っている。
園内での活動場所を決めるとき、私はいつも二歳から四歳の子の教室に立候補していた。一歳に満たない赤ちゃんの教室があることは知っていた。だけど行こうとはしなかった。
ある日の活動中、ひょんなことから幼児教室から乳児教室へ行くよう保母さんに言われた。すごく怖かった。弟や妹もいず、これまで赤ちゃんという存在に触れたことのなかった私は、楽しみ、不安という気持ちよりも先に、怖いという気持ちがあった。赤ちゃんにまつわるトラウマもなければ、脅威に感じているというわけでもない。ただ、未知の存在でありすぎたのだ。
教室に行くと、赤ちゃんたちは寝ていた。そのうちの一人を見ることになり、寝顔を見つめていた。すると突然、寝ていた赤ちゃんが目を開け、私の顔を見るなり泣き出したのだ。私はどうすることもできず、唖然としてただ立ち尽くしていた。保母さんがあやし、赤ちゃんが泣きやむと、「抱いてみて」と言われた。「できません」と言いながらもぎこちなく赤ちゃんを抱く私。今にも泣き出しそうな顔で私を見つめる赤ちゃん。
熱くて重く、ミルクの匂いがした。
生きている、と思った。抱いている私が汗ばむ程熱く、どっしりとした命の重さを感じた。名前を呼ぶと笑顔で応え、その手は何かをつかもうとしている。私は言いようのない感動を覚えた。
なぜ私たちは生きているのか。初めて赤ちゃんを抱いた経験は、私のそんな疑問にヒントを与えてくれた気がする。私たちが生きている理由、それは「生まれてきたから」なのかもしれない。 |
|
|
赤ちゃんを初めて抱いた時の気持ちと感動が素直に伝わる、大変よい作品です。ただ「熱くて重く、ミルクの匂いがした」を文頭と文中で二度書く必要はないと思います。二度目は無くてもよかったのではないでしょうか。また、締めくくりで「私たちが生きている理由」まで結びつけたのは少しぎこちないように思われます。赤ちゃんを抱いた体験から感じた気持ちにしぼってまとめてもよかったのではないでしょうか。 |
|
|
|
|
|
|
Copyright c2005 Nihon Fukushi University. All rights reserved.
本ホームページからの転載を禁じます。 |
|
|
|