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第4分野 社会のできごと「どうして?」
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入賞者発表
第4分野 社会のできごと「どうして?」
最優秀賞 「アレン・ネルソン氏が教えてくれたこと」
函館ラ・サール高等学校 一年 小渡 真人
 実家を離れ、高校生活を送り始めた僕の所に母から1枚のCDが届いた。貧困ゆえに志願兵となりヴェトナム戦争を戦った元米兵アレン・ネルソン氏のスピーチだった。初めは寝っ転がってCDから流れる落ち着いた声の英語を聞いていた。が、彼が語る戦争の壮絶さに途中で思わず起きあがり、聞き終える頃は身震いが止まらなくなっていた。
 僕はなんて無知だったんだ。好きな映画はプライベート・ライアンだった。マット・デイモンが演じる兵士を祖国と平和のために戦う死を恐れない勇敢な奴だと思った。ストーリーに酔い、反戦映画の最高傑作だとさえ思った。僕が語る反戦なんて、なんて薄っぺらだったんだろう。ネルソン氏に頭をぶん殴られた思いがした。
 氏が語る戦争は、想像を遥かに超えるものだった。人間は片っ端から殺す。寝こみを襲い、ジャングルに逃げる女子供を容赦なく殺す。辺りは死臭、血の臭いが充満しているというのだ。
 氏は帰国後10年以上もPTSDに苦しむ。夜になると戦場の光景にうなされたと言う。
 平和のため、世界秩序のため、どんな大義名分も「殺人」の前には通用しない。高度な知恵を授かった人間が何度、安易に戦争という手段を選んできてしまったのか。
 戦争に終わりはなかった。平和だけが訪れるのでもなかった。多くの貴重な命を奪い、家族を奪い、兵士たちの心や肉体までも長く蝕んでいたのだ。
 経験者が語る言葉の重みが僕の心に深くのしかかる。氏は"You have been saved by Article9"と言う。僕は改めて憲法9条を何度も読み返した。そして"We protect Article9"とネルソン氏に誓いたいと思った。
 高校生になった僕にネルソン氏はとても大切なことを教えてくれた。
  講 評
 文章は良くまとまっていて力強さもあり、第4分野では頭一つ抜け出た作品でした。現実の戦争の悲惨な実態に触れて、憲法第9条を改めて読み返すという展開もすぐれたものです。その反面、まとまり過ぎているという印象もあり、物足りなさを感じたのも事実です。また「安易に戦争という手段を選んだ」という歴史認識は、せっかくここまで考察できる方なのですから、世の中はそんなに単純ではないことを知ってほしいとも感じました。

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