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入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 みんなが暮らすまち
第3分野 国境を越えた交流
第4分野 社会のできごと「どうして?」
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入賞者発表
第2分野 みんなが暮らすまち
優秀賞 「私の町、その姿」
岐阜県立飛騨神岡高等学校 三年 河上 千恵
 ここ数年で私の家のまわりの風景がだいぶ変わった。昔遊んだ貯水池は、道路を広げるために埋め立てられた。春になると必ず実を一杯につけた木イチゴの木は、公園を造るために切り倒された。
 人間がそこで暮らすために、自分たちの住みよい環境にすることは当然のことだろう。実際、田舎の細道は車が楽にすれ違うことが出来る広いアスファルト道になったし、沢山の遊具ときれいな芝生が敷かれた子供公園に子供達ははしゃいでいる。私は彼らに交じって遊ぶ歳では無いけれど、もっと早くにこうした公園が出来ていたら、毎日学校から帰ると友達と連れだって出掛けただろうと思う。
 けど、公園ではしゃぐ子供達を見ていて、ふと心のどこかが寂しくなることがある。あの子達は、この土地に生きていたものを見ることができないのではないだろうか。
 小さい子供がおぼれる心配の無くなった人工の小川に、群れて泳ぐ小魚の姿は無い。芝生の上を裸足で走る子供は、土手の砂利道の傍らに咲く小さなスミレの花を見ることはない。かわいいペンキ絵の遊具で遊ぶ子供達は、みんなで遊ぶ「鬼ごっこ」を知らない。
 町は少しずつ変化する。新しいものが出来、その分その町に残っていた思い出の姿も消えていく。私がこの町を出てからも、町は変わり続けるだろう。そして、久しぶりに帰郷したとき、全く違う町の姿に出会うだろう。
 私は町が変わることに反対なのではない。ただ、最近言われる「町づくり」は町の姿を変えるだけの様な気がしてならないのだ。一時のブームに乗っかった浅はかな模様替えでしかないような気がしてならないのだ。
 子供達が成長する中でふれあう大切な部分は残して欲しい。そこは大きくなったとき、大切な思い出の場所であろうし、町の貴重な歴史となるのだから。
  講 評
 感情論ではなく、冷静かつ具体的に書き上げられていて、文章はよくまとまっています。「町づくり」と言いながら、どんどん町が壊されていることを深く考えている点を評価しました。そういった気づきがエッセイを書くときに大切になってくるのです。そして「この土地に生きていたもの」と過去形にしたところが秀逸。この過去形が読み手をドキッとさせ、文章全体を非常に活き活きとしたものに仕上げています。

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