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学長メッセージ
審査員の評価と感想
受賞者紹介
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 みんなが暮らすまち
第3分野 国境を越えた交流
第4分野 社会のできごと「どうして?」
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入賞者発表
第2分野 みんなが暮らすまち
最優秀賞 「僕の出来る事」
郁文館高等学校 二年 田渕 令士
 テレビで街の様子が写る時(あれっ、この近所に似ているなぁ)と思う事がある。同じような家、同じような道。いつか僕がこのまちを出て、違うまちに住んだとしても、あまり違和感を覚える事はないのだろうか。
 いや、実は僕はこのまちが大好きなのだ。たくさんの友人がいて、たくさんの思い出があるこのまちには、強い思い入れがある。
 僕は小学三年の時、交通事故にあった。歩道のない道で、前方不注意の車に左足を巻き込まれた。そして三ヶ月の入院。足が成長する度に手術入院を繰り返し、小・中学校時代はたくさんの人に助けてもらった。ノートを届けてくれた人、肩を貸してくれた人、傷跡の事でからかわれた時本気で怒ってくれた人。誰もが大事な友達だ。
 入院中にも色々な人に出会った。人はそれぞれ、重い物を抱えて生きている事も知った。でもあの頃、僕は僕の事ばかり考えていた。次の入院はいつだろう。のんきそうにゲームをしている時も、いつも気持ちは重かった。だが足の成長が止まり手術がなくなると、そんな思いも徐々に薄れていった。
 ある日の夕食の時、母が急に話し出した。
 「以前病院であった鉄棒で指を挟んでなくした子の事、覚えてる?あれからその子のお母様は、市内の鉄棒を全て固定式に替えさせたそうよ。すごく大変だったらしいけど、頑張ったみたい。…あのね、お母さん今まで、あなたの事しか考えた事なかった…」
 しばらくして、裏山が宅地開発され道路が通るという話が出た時、母はその道に歩道をつける為の署名を始めた。僕の看病をしてくれている時みたいに、一生懸命に!
 完璧なまちなんてありえないから、少しずつ作り上げていくしかない。このまちの為、僕にしか出来ない事ってなんだろう。まだ答えを探せない僕は、この夏、友達と小さなボランティアを計画している。とりあえず体を動かしながら考えてみようと思っている。
  講 評
 個人の憤りが社会に対する憤りへ広がっていく視点が良く、文章もまとまっている点が評価され、文句なしの最優秀賞でした。最後に「この夏、友達と小さなボランティアを計画している」と、行動に結びつけている点も好感が持てました。ただ、第二段落の「いや、実は僕はこのまちが大好きなのだ」の「実は」という表現が少し気になりました。もう少し柔らかい表現にすると、なお良くなるでしょう。

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