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学長メッセージ
審査員の評価と感想
受賞者紹介
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 みんなが暮らすまち
第3分野 国境を越えた交流
第4分野 社会のできごと「どうして?」
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入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
審査員特別賞 「笑顔が咲く時」
大阪府立河南高等学校 三年  岩崎奈穂
 私が中学三年生の時のことだ。受験勉強に追われていた冬休みのある日、気分転換に外へ出た。家の近くに、旧国道や住宅地から隔離された広大な田畑がある。その周囲とあぜ道が私の散歩コースだ。歩いていると、脇のビニールハウスが目に止まった。中で女の人が作業をしている。なぜか気になって立ち止まり、見ていると、その人が私に気づいて微笑みかけてくれた。その笑顔が嬉しくて、私は挨拶をした。「何をなさってるんですか?」と尋ねると、「百合の花束を作ってるのよ」と返事が返ってきた。蕾ばかりで青々しい百合を束ねていく手つきがなめらかだ。ビニールハウスに入れる機会はなかなかないと思って、思いきってハウスを見学させてもらえないか尋ねると、快諾してくれた。私は緊張しつつも、知らない人と話せるのが嬉しくて、学校のことなどを少しずつ話し、色々質問した。その人も、仕事のことや、手伝ってくれる娘さんのことなどを話してくれた。途中、「こういう所に興味持つ子は珍しいね」と言われ、「私はこの仕事好きじゃないけど」と続けられた。驚いた。だって目の前の花々は、蕾のままでも、綺麗に咲くことを充分予想させる。丁寧に育てられたのだ。私は「普通 、花は咲くのを楽しみに育てますけど、このお仕事は(卸売に売るので)花は見られませんからね」と言った。でも、と私は続ける。「きっといろんな所で綺麗に咲くでしょうね」
 その人は少し恥ずかしそうに「うん」と言った。その顔が嬉しかった。帰り際、その人は私に百合をくれた。本当に嬉しくて、何度もお礼を言って帰った。その後花は長く咲いて、私の受験を机の上で応援し続けた。二ヶ月後、私は合格の報告と一枚の絵を手に、ハウスへ向かった。百合は、薄桃の大きな花を咲かせ、絵の中に収まった。その人が育てた花がどんなに綺麗か知ってほしかった。絵を見たその人は「ありがとう!」ととても喜んでくれた。その時の満足そうな顔が、私は忘れられない。
  講 評
 いただいた花の絵を描いて持っていくというのは、よっぽど嬉しかったのでしょう。その素直な気持ちがうまく表現されていました。何でもない出来事ですが、人と人との関係とは、こうしたちょっとしたことから始まるものです。人と人との関係が希薄と言われる現代に、自分から行動していった勇気をリアルに表現した点を評価しました。

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