イメージ タイトル
学長メッセージ
審査員の評価と感想
受賞者紹介
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 みんなが暮らすまち
第3分野 国境を越えた交流
第4分野 社会のできごと「どうして?」
募集テーマ内容・募集詳細はこちら
応募状況
参加校一覧
TOPに戻る


入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
最優秀賞 「手をつないだよ、お友達だよ」
調布高等学校 三年 長谷川 祐美
 たった一回、それも十五分程のささやかなふれあいで、五年たった今でも忘れられない思い出がある。
 中学一年の時、少し遠方の先生の所にピアノのレッスンに通っていた。その電車内でのことだ。ある日、一人の少女が乗って来て、にこにこと笑いかけながら、坐っている私の前に立った。小学校四、五年生ぐらい、明らかに私より年下だった。少女は次の駅名が放送されると、「次は○○駅だよ」と私に話しかけてきた。終点まで行くことをつげると、「じゃあ、クイズをしよう」と言って謎々遊びを問いかけてきたのだ。その問題の幼さとなによりもその少女の無防備なまでの人なつっこさで私は彼女には少し知的障害があることに気がついた。彼女の積極性に戸惑っている私に少女は次々と謎々を出し続け、私もその笑顔に引き込まれて謎々遊びを続けた。
 終点に着き下車する時になると少女は「手をつなごう」と言って私の手を取った。ホームの隙間では「気をつけるんだよ」と言いながら私の足元に注意してくれた後、終始、わずかに離れて見守っていた彼女の母親の所に駆けていった。すぐに「ママ、あの子、お友達だよ。手をつないだよ。だからお友達だよ。かわいいね」 少女が母親に楽しそうに話している声が聞こえてきた。ふり返ると、「バイバイ」と彼女が大声で手を振った。私も彼女と同じぐらいの笑顔で「バイバイ」と手を振り返した。
 どうぞ、あの少女のあの明るさが失われることがありませんように。そして、その優しさゆえに彼女が傷ついたりすることが決してない社会でありますように。
 お互いに名前も知らないけれど、私達、友達だよね。あれから一度も会えないね。「かわいい」って言ってくれてありがとう。とても嬉しかったよ。
  講 評
 自然体・等身大の文章で、肩に力の入っていない書き方が高校生らしく、とてもいいですね。突然、電車の中で少女に話しかけられた驚きと、短い時間の中で得た温かい気持ちがよく描かれています。エピソードの内容自体は必ずしも印象深いものではありませんが、その時の光景や少女の笑顔が目の前に広がってきます。書き手の体温が読み手にしっかり伝わる文章であることが、最優秀賞に選んだ最大の理由です。

Copyright ©2003 Nihon Fukushi University. All rights reserved.
本ホームページからの転載を禁じます。