教材開発

  1. ホーム
  2. 教材開発
  3. 「ふくし」の仕事

はじめてのふくし

「ふくし」の仕事

どんな仕事も時代の変化とともに変わっていくものです。
「ふくし」のジャンルもまた大きく変わりはじめています。
これまでは「ふくし」というと、まず思い浮かぶのは障害者の施設や老人ホームでの介護(かいご)、親のいない子どもたちを支えるといった仕事でした。しかし、少子高齢化が進む今日、社会や人びとのニーズはどんどん広がっています。
「ふくし」の仕事はこれまでは『困っている人を援助する「ふくし」の仕事』が中心でした。「ふくし」がいっそう広まってきた現在、「困っている人」のためだけではない『新しい身近な「ふくし」の仕事』がどんどん現れています。
以下にくわしく見ていきましょう。

ページの一番上へ

(1)より豊かな生活を支える「社会福祉」の仕事

社会福祉は、障害者や高齢者、子どもなど、特別に援助を必要とする人びとを支援することです。この社会福祉の考え方や政策もまた、時代とともに変化しています。
これまでは支援の手をさしのべるのは所得の低い人や身寄りのない人、特別な事情のある人などを対象としていました。
しかし、だれもが、どのような生活困難にあっても普通の生活が送れるようにするべきだというノーマライゼーションの考え方が進んできました。つまり、その人の所得や家族の事情に関係なく、自立した生活ができなくなったときには、援助がうけられるという考え方です。
こうした社会福祉の仕事をしていく上でさまざまな職種があります。以下にいくつか紹介しておきましょう(川井竜介・浜名純『福祉のしごと』労働旬報社, 1996)。

1. 人に対して相談や援助する職種――
  ソーシャルワーカー(社会福祉士)とケアワーカー(介護福祉士)

まずは、相談や援助を直接おこなう仕事を見ておきます。どの分野にも共通するのは、ソーシャルワーカー(SW)とケアワーカー( CW)です。
ソーシャルワーカーは、生活の中でさまざまな困難や悩みをかかえる人の相談にのって、役に立つ情報を提供したり、援助する人や施設を紹介したりします。
ケアワーカーは、介護(かいご)の必要な人に対して、直接身の回りの世話をし、介護(かいご)方法の指導をします。
ソーシャルワーカーもケアワーカーも専門学校や大学で福祉を勉強して介護(かいご)福祉士や社会福祉士の国家資格を取得するのが一般的です。
特に社会福祉士は、社会福祉に関わる業務の基礎的な資格になりつつあります。【コラム8

2. 子どもに関わる職種――
  児童福祉司(SW)と心理判定員、保育士

子どもの相談援助に関わる職場の代表は児童相談所です。
児童相談所は、18歳未満の子どもに関わる相談ならすべて受け付けます。職員は公務員で、代表的な職種は児童福祉司( SW)と心理判定員です。
最近は、児童虐待(ぎゃくたい)の仕事が増えています。2000年5月に成立し2004年改正の児童虐待(ぎゃくたい) 防止法によって、虐待(ぎゃくたい)が早く発見できるようにし、児童相談所による自宅への立ち入り調査を強化しました。
また、親子・家庭がもとに戻るような援助にも力を入れます。
しかし、子どもを親のもとに帰せないときは施設に子どもを入れたりします。その中心になる施設が児童養護施設【コラム9】です。
児童福祉の施設は、知的な発達、感情の発達に問題がある場合、非行など行動にゆがみがあるときは、専門の施設が用意されています。
施設では、子ども(児童)の指導にあたる職員と保育士が中心となります。
保育士の職場としては、もう一つ保育所があります。保育所では、乳幼児の保育はもちろん、教育にも配慮し、一人ひとりの子どもが小学校入学に向けて、自分で生活の基本となる食事や排泄(はいせつ)、衣服の着脱(ちゃくだつ)などがスムーズにおこなえるように教育しています。また、保育の時間延長や夜間延長保育などもあり、保育士の役割が拡大しています。

3. 少年事件や家族のトラブルに関わる職種――
  家庭裁判所調査官

家庭裁判所【コラム10】には、調査官という非行や家族関係の事実調査や人間関係の調整などをおこなう専門的な仕事(専門職)にたずさわる人がいて、非行少年の立ち直りを援助したり、離婚など家庭のトラブルの仲介をしたりしています。
非行少年の立ち直りを支援するために、保護観察所や少年院があり、保護観察官、法務教官という、調査官と同じような専門職がいます。

4. ハンディキャップのある人を地域で支える職種――
  介護(かいご)支援専門員(ケアマネジャー)、訪問介護(かいご)員(ホームヘルパー)

高齢者や障害者が、地域社会でふつうにくらせることが大切です。
そのために、福祉と保健・医療の専門職が協力してそうした人たちの介護(かいご)や生活の支援をおこなっています。
高齢者の場合、市町村で介護(かいご)サービスが必要だと認定されると、介護(かいご)支援専門員(ケアマネジャー)が、その人に応じたケアプランを作成します。
ケアプランというのは、介護(かいご)を受ける人にとって必要な目標や方針を立てることです。
通称「ケアマネ」と呼んでいますが、医師、看護師、保健師、社会福祉士、介護(かいご)福祉士、作業療法(りょうほう)士などの資格をもった人が取れる資格です。
高齢者や障害のある人たちの介護(かいご)サービスをおこなうのは、社会福祉協議会をはじめ社会福祉法人(地域の福祉を支える民間組織)や民間の指定業者、農業協同組合( JA)、生活協同組合、非営利活動法人( NPO)などです。
自宅で生活する人の介護(かいご)をする代表的な仕事は訪問介護(かいご)員(ホームヘルパー)です。
自宅での生活がむずかしい場合は、高齢者のための特別養護老人ホームや老人保健施設、医療施設(病院)などのほか、障害のある人たちにもさまざまな施設が用意されています。
そこには、ソーシャルワーカーやケアマネジャーがいて、先に説明したように介護(かいご)などに困る人の相談にのっています。
高齢者や障害者に医療や保健の専門職の協力が必要な場合には、医師、看護師、保健師、理学療法(りょうほう) 士、作業療法(りょうほう)士、言語聴覚(ちょうかく)士、心理セラピスト(臨床(りんしょう)心理士の資格を持つ者が増えている)などが協力します。
また、病院などにおいて、適切な医療が受けられるように援助し、生活問題の相談にのる医療ソーシャルワーカー(MSW)がいます。
そのうち、精神に障害のある人を支える精神科ソーシャルワーカー( PSW)には、精神保健福祉士という国家資格があります。

ページの一番上へ

(2)広がる「ふくし」の仕事

さきほど紹介した仕事は「ふくし」の中でも社会福祉の仕事です。
現在、「ふくし」の仕事は非常に幅広くなっています。
また、「ふくし」の仕事はこれまで国や公的な機関が中心におこなっていましたが、最近では民間企業がいろいろな形で「ふくし」に関わるようになってきました。【コラム11
以下に広がる「ふくし」の仕事の一例を紹介します。

1. 介護(かいご)や施設経営などに関わる仕事

自宅で介護(かいご)を受けて生活する人のためのホームヘルプサービスをおこなう会社や、老人ホームなどの施設を経営する企業が増えてきています。
また、介護(かいご)などで使用する用具を販売する介護(かいご)ショップ、車イスや介護(かいご)ベッドといった福祉用具のレンタルショップなども登場してきています。
そういったお店では、福祉用具についての情報を利用者に提供したり、利用者に最適な製品をコーディネートするなどのサービスもおこなっています。
このように利用者を支援するのも大事な仕事です。

2. ハンディキャップを補う機器をつくる仕事

紙オムツのような身につけるものから、補聴器(ほちょうき)や車イス、介護(かいご)ベッドといったものまで、さまざまな福祉用具があります。
このような福祉用具を開発するのも「ふくし」の仕事です。
例えば、車イス一つをとっても、ハンドル型電動車イス、段差などを乗り越えられる車イス、車イスに乗ったまま立ち上がる機能がついた車イス、リクライニング機能のついた車イスなど非常にたくさんの種類があります。利用する人がいちばん使いやすいものを選べるようにさまざまな種類が作られています。
また、既存(きぞん)の機器を高齢者や障害者の立場に立って改良して販売する企業もたくさんあります。
目が不自由な人のための点字プリンターやHP(ホームページ)読み上げソフト、車イスでも乗り降りができる福祉車両、聴力特性にあわせた補正や振動で音楽が楽しめるヘッドホンなど、さまざまな機器が登場しています。

3. ハンディキャップを補うためのサービスをおこなう仕事

障害などをもった人や高齢者などがもっと快適にくらしていけるように、従来の仕事に「ふくし」の視点を盛り込んで新たなサービスを行う企業も増えてきています。
寝たきりの人や車イスの人が利用できる福祉タクシーやヘルパー資格を取得した運転手が対応する福祉サービスタクシーなどが良い例かもしれません。
また、メールやインターネット機能の向上により、耳が聞こえにくいなどの障害を持った人でも携帯電話を利用する機会が増えてきました。
そういった人たちが携帯電話を購入する際に困らないように、テレビ電話を利用した手話通訳サービスをおこなっているお店もあります。
このほか、手話通訳サービスや車イス貸し出しを行っているホテルや百貨店も少なくありません。障害者に配慮した内容のパッケージツアーや高齢者向け化粧教室なども登場しています。

4. より快適にくらすための環境をつくる仕事

不自由なく快適に過ごせる環境づくりも大切な「ふくし」の仕事です。
最近では、バリアフリーに配慮した住宅をつくる建築会社が増えています。
階段や廊下(ろうか)に手すりをつける、玄関や床の段差をなくして移動しやすくする、車イスでも使いやすいようにキッチンの高さを調整するなどバリアフリーのためのさまざまな工夫がなされています。
住宅に限らず商業施設や街全体をバリアフリーにするための計画や開発の仕事も重要です。
また、最適な福祉サービスを受けるための相談や最新の福祉サービス情報を提供するような仕事もあります。
個人だけでなく、地域全体の「ふくし」を向上するための地域福祉支援システムなどの整備に取り組む自治体などもあります。

5. 海外に広がる「ふくし」の仕事

開発途上国の人たちが自分たちの力で国を発展させることができるように、知識や技術を援助するのも大切な「ふくし」の仕事です【コラム12】。
国内外のさまざまな機関やNGO(非政府組織)が、開発途上国の援助に貢献しています。
もちろん、どの国の人たちも自分たちでさまざまな工夫をして自分たちの「ふくし」を支えあっています【コラム13】。
しかし、その国の人たちだけでできることには限界があります。
どのような形でどんな援助をしていくかを考え実践していくために、その国の現状を理解することが、海外で「ふくし」の仕事をしていく上で大切となります。

6. より身近な「ふくし」の仕事

身近なところに「ふくし」に配慮したさまざまな仕事があります。
環境破壊などにより、私たちの住む環境が悪くなると快適な生活ができなくなります。
環境にやさしい排気ガスの少ない車をつくることや、リサイクルやリユースしやすい素材で製品をつくりゴミ の排出を減らす工夫(くふう)をすることも、私たちが快適に生活する「ふくし」を支える仕事です。
銀行や保険会社は、年金や保険など私たちの生活に大きく影響する問題についてしっかりと相談にのってくれます。
相談業務自体も「ふくし」を支えていますが、それ以上にこういった仕事は、「ふくし」の視点をもって相談者に最適な対応をすることが重要です。

以上のように、「ふくし」の仕事はあらゆる分野に広がっています。
このほかにも「ふくし」の視点を加えると、より良くなる仕事はたくさんあります。
それぞれの仕事を通して「ふくし」を支える役割を果たしているのです。

ページの一番上へ

(3)増えている児童虐待(ぎゃくたい)、不登校、非行

1. 子どもの虐待(ぎゃくたい)はなぜおこるのか

少年院や児童自立支援施設に入っている子どもの過半数を受けた経験があるという報告がされ、虐待(ぎゃくたい)を受 けた子どもと非行の関係に注目が集まっています。虐待(ぎゃくたい)通告件数は2 0 0 4 年には3万3 , 0 0 0 件に達し1 0 年前の29倍近くとなり、虐待(ぎゃくたい)によって週に1人が亡くなっています。 虐待(ぎゃくたい)はなぜ起こるのでしょうか。第1のキーワードは、「孤立した子育て」に原因があります。 母親は子育てに熱心なのに、夫や親など身近な人たちの協力が得られないと、子育てが不安になってしまうかもしれません。第2は、親自身がかかえている問題です。加害者となった親や暴力の被害者であることが少なくありません。 うまく人間関係が結べないとき孤立していきます。 第3は、子ども自身がかかえている問題です。目にみえる障害だと手をさしのべやすいのですが、最近注目されてきたADHD(注意欠陥・多動性障害:落ち着きがなかったり授業に集中できなかったりする障害)などの障害は見た目には判 わかりづらいものです。こういった目に見えない障害は、子どもの発達の状態をていねいに見きわめた適切な支援が必要です。という暴力とならんで、夫から妻への暴力(DV=ドメスティック・バイオレンス)が増えています。もちろん、子どもへの影響も大きく、着目する必要があります。

2. 不登校はなぜ起こるのか

不登校の問題は以前からずっと続いている古くて新しい問題です。現在、その数は12万人を超えており、急激な減少は 今のところ期待できそうもありません。また、成人のひきこもりは50万人とも100万人ともいわれています。 中高校生で不登校になる中心的なタイプは、周りの期待に応えようと勉強しすぎるあまり、プレッシャーに負けて燃え尽きてしまう人たちと考えられています。「勉強しなくては」「学校へ行かなくては」と思う気持ちと、「行きたくない」という気持ちに心が引き裂(さ)かれてどうしたらいいのか分からなくなるのです。腹痛や下痢(げり)といった身体の症状(しょうじょう)があらわれて、学校を休む場合が多いようです。たしかに勉強は大切ですが心の病気になってはなにもなりません。あまり肩に力を入れないで気持ちを楽にしていくことが大事ですが、思い込みからの解放は簡単ではありません。

3. 凶悪(きょうあく)な事件は増えているのか

凶悪な犯罪の報道がされるたびに、少年非行の凶悪(きょうあく)化がさけばれます。しかし、実際に凶悪(きょうあく)事件は増えているのでしょうか。凶悪(きょうあく)犯や粗暴犯(そぼうはん)のピークは昭和30年代です。 殺人事件は、ピークには440件を記録しましたが、ここ20年以上は100件前後です。一方、10~15年の短期統計で見ると、青少年による路上での強盗が増えています。いわゆる「かつあげ」や「ひったくり」です。 非行で一番多いのは万引き、自転車・バイクドロボーが多く、見つからない、みんながやっている、見つかれば弁償すれ ばよい、といった軽い気持ちでおこなわれているところに大きな問題があります。 高校中退者は毎年10万人いた2001年までよりは減少したものの在学生に占める割合は2%を超えています。 少年たちが学校の中に居場所を失っていることも少年の非行化に大きく影響しています。 もともと思春期・青年期はキレやすい時期といわれ、問題を起こしてしまう青少年は少なくありません。凶悪(きょうあく)な問題にだけ目を奪われるのではなく、身近なところで起こっている問題をどのように解決していくかを考えていく必要があります。

ページの一番上へ

(4)路上生活者(ホームレス)をどのように見ていますか

ホームレスはなまけものですか。不潔な人ですか。かわいそうな人でしょうか。みなさんは、どんな目でホームレスを見ていますか。厚生労働省の2003年1月~2月の調査によると、ホームレスは全国で約2万5,000人。大阪、東京、名古屋などの大都市圏に多く、約40%の人たちが街の公園で生活しています。平均年齢は56歳で、圧倒的に男性が多いのですが、女性も3%います。64%の人は廃品回収などで収入を得ていますが、1日3回の食事ができる人は30%もいません。76%の人が5年未満のホームレス期間で、過半数は結婚していた人です。そして、少なくとも65%の人は何らかの仕事を得て働きたいと願っています。 『豊かさの条件』(暉峻淑子,岩波新書, 2003)という本の中で紹介されている原昌平さんの文章は、ホームレスについて深く考えさせられます。少しやさしく表現をかえて紹介します。 「ホームレスの人たちが受けているきびしい体験は、けっして彼らが変人であるとか、家族の人間関係がうすいからではありません。原因は、失業によってお金がなくなったからです。仕事を失い、そのことで家族関係がうまくいかなくなり、貯金をつかいはたし、住むところがなくなり、そして身体や心を病(や)んでいきます。 自分の積み重ねてきた人生が次々に失われ、ひとりさびしく自分のふがいなさに落ち込み、睡眠不足、栄養不足、寒さ、衛生状態の悪化、アルミ缶や古(こ)紙を回収してわずかのお金をえる困難、食事や寝場所を確保するための仲間うちの争い、盗難(とうなん)や襲(しゅう)撃(げき)に対する警戒(けいかい)心に悩まされます。24時間、ストレスの連続で安心できるときはなく、将来への希望もありません。 そのうえに道行く人たちから、ばかにしたりあわれんだりする視線を受け、それだけでなく、ときには暴力的な襲撃(しゅうげき)も受けます。そしてそれらに耐えられなくなった時、生き延びることをやめる自殺があるのです」。 人間らしい生活ってなんだろう。ホームレスに関する原さんの文章は、あらゆる角度から「ふくし」を考えなければならないことを物語っています。とりわけ、経済の仕組みをきちんと学ぶことで、なぜ仕事がなくなりお金のない状況になってしまうのか、ということを考えていくことが大事です。

ページの一番上へ

(5)自然や生活の環境がこわされていませんか

自然環境を守ることは、大きくとらえていえば「地球にとってのふくし」です。私たちは「地球」上で生きています。地球があるから経済も文化も教育もあるのです。この地球の環境を破壊することは私たちの生活やいのちを破壊することでもあり、わたしたちの「ふくし」、つまり「幸せ」も失われます。 高橋裕さんの『地球の水が危ない』(岩波新書, 2003)という本は、人が生きるのになくてはならない水を通して自然環境の大切さを教えてくれます。この本には、1970年代以降、環境問題の関心が高まったことで、地球規模で水問題がつよく意識されるようになったと書かれています。

こういった多くの問題が取り上げられていています。日本では水問題への関心がうすく、飲料水として上質な水道水があるのに、ペットボトルの水を輸入してまで飲む傾向にも問題を提起しています。 また、石弘之さんの講演〔注〕では食料と自然環境についての問題が提起されました。ハンバーガー用の肉牛を育てる牧場にするために熱帯林を伐採(ばっさい)した結果、熱帯林が丸裸となったコスタリカのはなし、収入を得るために山林を伐採(ばっさい)してトウモロコシ畑を作った結果、土地が養分を吸い取られ荒地となったタイのはなしなど、多くの問題が伝えられました。 また、ダイオキシンによる大気汚染(おせん)、過剰消毒の輸入食品による健康への影響、ゴルフ場建設で山を追われた猿が畑を荒らすなど、自然環境について考えさせられる話題は私たちの身近に少なくありません。 環境破壊の問題が取り上げられる一方で、地球の環境を守るために、日本はもちろん世界中でさまざまな対策や活動がおこなわれています。 狭い国土にあふれる車公害を解消するため、将来、ガソリンスタンドを水素ガススタンドに変えようと、つまり水素+酸素=水にして汚染(おせん)を防ぐ研究が現実のものとなっています。また分別ゴミ収集でゴミ焼却量を減らす努力をしています。さらに天然水を大切にするための対策も難しいことですがとても重要です。 こうして幅広い分野で「ふくし」の実現がはかられています。しかし、まだまだ完全ではなく、これからもなお一層、「ふくし」を浸透(しんとう)させていくことが重要です。 いま、地球の寿命を短くしない「ふくし」が求められているのです。 〔注〕石弘之さんの講演内容は、1998年7月5日に日本福祉大学後援会10周年文化講演会で話されたものです。 石さんは当時、東京大学大学院総合文化研究科教授でした。

まとめてみよう

いくつかある「ふくし」の課題の中から1つ選び、それについて自分が感じた点や自分の考えについてまとめてみよう。

ページの一番上へ

戻る