プロジェクト概要

文部科学省が、わが国高等教育機関の大部分を占める私立大学等における研究基盤の整備および研究機能の高度化を図るため、「私立大学学術研究高度化推進事業」として行う支援事業のひとつです。学術フロンティア推進事業は、私立大学の中から、優れた研究実績を上げ、将来の研究発展が期待される卓越した組織を「学術フロンティア推進拠点」に選定し、研究施設、研究装置・設備、研究費、研究スタッフについて、総合的かつ重点的に支援するものです。
本プロジェクト「地域ケア推進のための政策空間の形成とボトムアップ評価に関する研究」は、2002-2006年度に採択された「地域ケアの政策・臨床評価とその活用システム構築に関する研究」プロジェクトを継続するものとして、2007年度に「私立大学学術研究高度化推進事業(学術フロンティア部門)」に採択されたものです。

本研究プロジェクトは、これまでの学術フロンティア日本福祉大学第Ⅰ期学術プロジェクト「地域ケアの政策・臨床評価とその活用システム構築に関する研究」(2002~2006年度)の継続であり、活用システムとして提案している「ボトムアップ評価」のさらなる精緻化と評価現場への応用化を図る研究です

1.研究構想

本研究プロジェクトの内容としては、

  • (1) 拠点機能を有する地域ケア研究推進センター内の福祉政策評価センター(データベース・センター)に蓄積されたデータを分析・配信し、「政策評価自治体ネットワーク」を築き、
  • (2) 「ボトムアップ評価」方式として確立した5原則による評価を普及させ、
  • (3) 評価を契機としPDCAの政策サイクルを循環させ、地域ケア推進の「政策空間」の形成を進める、というものです。

研究は3つのキーワードを軸に推進する構想です。
「包括的な地域ケアの推進」としては、政策課題としての地域ケアが強まるなかで、地域社会への費用や負担の転嫁ではない、真にQOL向上に結びつく日本にふさわしい地域ケアの推進のあり方を研究していきます。そして、その実施過程に注目し「マネジメント研究」として、メゾとミクロを結ぶ地域ケアのマネジメントの方法、および分権型の自治体運営のあり方について研究していきます。さらに、政策評価のサイクルを踏まえた「ボトムアップ型評価」という日本福祉大学独自の評価方法の提案を行っていきます。

これらの3つのキーワードを各研究チーム<「地域ケアチーム」「ケアマネジメントチーム」 、「臨床評価チーム」>がリーダーシップをとりながら、融合的な研究を目指していきます。
地域ケアの現場では、高齢者ケア・障害者ケア・地域福祉(住民参加による地域ケア)の3領域を融合的に推進する政策課題を有しています。そのための地域ケア推進の「政策空間」をどのようにマネジメントするかという一種のガバナンス研究としての性格を本研究は持っています。また、これまで国際的な共同研究としてイギリスを重視してきましたが、地域社会を重視する地域ケアへの政策転換もあり、西欧とは異なるアジア地域社会の文脈を取り入れるため韓国との共同研究に着手していきます。

2.研究内容

研究内容は、次の4つの領域に分けることができます。

  1. 「地域ケア推進のための政策空間」の構造に関する研究
    地域ケア推進が高齢・障害・地域福祉の各分野でどのような政策として推進され、実施に移されているのか、そしてその実施現場での実践がどうように機能しているのかについて構造的に把握していきます。現在のところ「政策空間」は、自治体によって取り組まれる「計画空間」、地域ケア・プログラムごとに評価される「評価空間」、地域ケアの利用においてチームとしてアセスメントやモニタリングがなされる「ケアマネジメント空間」を含み、それらの集合としての構造をもつと考えられます。
  2. 「ボトムアップ評価(5原則)」の精緻化と「政策空間」の形成への活用
    「ボトムアップ評価(5原則) 」は、
    (1) PDCAのサイクルマネジメントのための評価、
    (2) 重層的な評価を進める自治体による主導性、
    (3) 現場の多様な主体が参加する多面的な評価、
    (4) エンドユーザー中心の評価、
    (5) デジタルデータを活用した自治体間等の比較評価、としています。
    これらの原則の精緻化を図るとともに、評価現場で活用できるようにマニュアル化を進め、その活用の動向を調査研究するとともに、「政策空間」の形成への活用とその影響を把握していきます。
  3. 国際共同研究の推進   
    国によるトップダウンの評価ではなく地域ごとに評価を実施する「ボトムアップ評価」を開発するために、その先駆的な研究開発を行っているマンチェスター大学PSSRUとの共同研究を推進していきます。「地域福祉計画」の評価を試みている韓国福祉電話ネットワークとの共同研究を進めるなかで、ボトムアップ評価5原則の有効性についての国際比較研究を進めていきます。
  4. 地域ケア推進の評価としての融合化研究
    上記の研究を、高齢者・障害者・地域福祉を横断する地域ケアの推進政策の評価として融合させることが必要となります。これまでの研究においても焦点化された研究分野としては、ターミナルケアや認知症高齢者ケア、介護予防がありましたが、さらに障害分野として知的障害・精神障害分野を取り入れ、分野ごとの個別性を踏まえた総合的な地域ケアの評価研究を進めていきます。さらに研究方法においては計画レベル・実践レベル・実証レベルでの融合化研究を推進していきます。

3.第I期研究プロジェクト(2002~2006年度)から今期研究プロジェクト(2007~2009年度)への展開

介護保険の政策評価から地域ケアの評価へ踏み出す 地域ケアの評価から、その推進・包摂化のための評価へ
障害・地域福祉分野へも展開 障害者自立支援法の実施段階
地域ケア(介護保険)の臨床から政策までの重層的な評価システムを構築 ボトムアップ型評価として定着化を図り、自治体の評価マネジメントを支援

<2チーム制>

地域チーム

臨床チーム

<3チーム制>

地域ケアチーム

ケアマネジメントチーム

臨床評価チーム

データベースセンターとして、地方自治体や厚生労働省からの信頼 データベースセンターから、政策ネットワークセンターへ
福祉政策評価センターの開設 2005年度 福祉政策評価センターと自治体介護保険・障害福祉・地域福祉担当部局とのネットワーク
英国の先端評価研究機関との交流 情報発信・応用型の研究交流へ
英国の評価方法からの学び 英国の評価システム比較研究
韓国との共同研究の実施