工学部
2025.09.09
コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える「eスポーツ」は近年とても人気があります。今回はeスポーツサークルの顧問を務める大場先生に、eスポーツの現状や可能性をお話しいただきました。
原田学長 近年人気が沸騰中のeスポーツですが、今日は半田キャンパスのeスポーツサークルの顧問をされている大場先生にお話しを伺います。まずは簡単に概要を教えてください。
大場先生 半田キャンパスのeスポーツサークルは2024年に創部しました。学生の中では元々プレイ人口が多く、2年目ながら約30名が所属しています。創部メンバーの中には、海外大会を観戦する学生もおり、私の研究室でeスポーツの研究をしていました。彼は「VALORANT」というゲームを中心にプレイしていたのですが、「マウスの動かし方1つで結果が変わる」といい、プロプレイヤーと中級者、初級者のマウス操作をAIを利用して解析していました。他にも、マウス操作の練習ソフトの開発をする学生、ゲーム中の視線の動きを解析する学生がいたりと、皆熱心に研究する様子が印象的です。
原田学長 そうなんですね。eスポーツの研究はどの程度一般的になっているのでしょうか。
大場先生 日本はかなり出遅れており、関東の大学でいくつか研究があるくらいです。しかし、韓国やアメリカでは、プロゲーマーが職業として認知されており、研究も盛んだと聞きます。また、ゲームがうまくなるだけでなく、「認知症予防のためのeスポーツの研究」が近年進んでいます。
原田学長 若い人たちだけではなく、認知症予防などにも効果が認められているんですね。いろいろな自治体でも高齢者向けの施策として取り組みが進んでいると聞きますが、知多半島ではどうなんでしょうか。
大場先生 知多半島でいえば、大府市が大々的にやっており、1,000人以上の人が登録しています。登録者は放課後保育を受ける児童から高齢者まで幅広く、太鼓を叩くゲームやパズルゲームなどが人気です。全国健康福祉祭(通称ねんりんピック)という高齢者を中心とした健康増進や生きがいづくりを目的としたスポーツ・文化交流の祭典でもeスポーツが導入されています。
原田学長 ねんりんピックでも人気になっているとは驚きました。他にも、高齢者が主体となっている事例もあるのでしょうか。
大場先生 秋田県には、60歳以上のプロゲーマー集団をサポートする会社があるそうです。しっかりしたエビデンスはまだないようですが、「戦略を考えながら操作するなどの複数課題を同時にこなすことが求められるゲームは認知症予防につながる」と言われているようです。来年、開催される第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)では中部国際空港が会場となると聞いています。世界中のプロゲーマーが来日するので、ぜひ本学にも遊びにきてほしいです。
原田学長 なるほどこれからeスポーツの可能性というのは大きいのですね。考えてみたら、インベーダー世代の方たちが高齢期になっていくので、レトロゲームも需要が高まるかもしれないですね。
原田学長 大場先生は、情報システム開発について研究されていますが、ご自身の研究とeスポーツとの関連についても教えてください。
大場先生 2024年、スポーツ庁が推進する委託事業「令和6年度 Sport in Life推進プロジェクト」に株式会社コミュニティネットワークセンター(CNCI)が提案した「新しいシニアの交流促進と運動習慣創出」が採択され、私も参画させていただきました。この事業の目的は、eスポーツを活用したさまざまな年代の交流体験と、参加者がプレイヤーを応援することに焦点を当てた「応援ダンス」によって新しい運動習慣の創出と検証を行うことです。この事業でご一緒させていただいたスポーツ科学部の助教で舞踊学を専門にされている山口晏奈先生とともに、ダンスの採点システム構築を進めています。山口先生を手本にプレイヤーがダンスすることで採点が行われるもので、モチベーションの維持ができるというものです。
原田学長 リハビリや健康維持・増進をめざす上でモチベーションの維持はとても重要ですね。この研究が進むことで、高齢者施設などでもカラオケのように普及してほしいです。
大場先生 今年度開設されたウェルビーイング工学研究センターの勉強会でこの話をしたところ、「高齢者施設を紹介しましょうか」、「点数だけでなく、腕を高く上げるともっと良いなどのアドバイス表示を入れては?」などの具体的なご提案もいただき、学内での共同研究も進められそうです。
原田学長 日福ならではの工学というものがとてもよく伝わってきました。ぜひこのような研究を進め、ウェルビーイングの実現につなげていきたいです。本日はありがとうございました。