60周年を迎えて

丸山 悟
学校法人 日本福祉大学
理事長
丸山 悟

どの子も伸ばす教育を

皆様のお蔭をもちまして、平成が30年を迎えた今年、日本福祉大学付属高等学校は創立60周年を迎えました。本校は、1958年4月、名古屋市昭和区杁中という、日本福祉大学と同一の場所に、日本福祉大学付属立花髙等学校として出発したのが起源となります。60年の歴史の中で、4割の24年を名古屋の地で過ごし、6割の36年は知多半島の美浜町で過ごしたことになります。学校名称も、日本福祉大学付属立花髙等学校から立花髙等学校(1972年)、日本福祉大学付属高等学校(1980年)と、2度変えています。

紆余曲折を経て、まだ発展途上の中間点ぐらいの「位置」ではありますが、本校の特徴が鮮明になり、県内屈指の存在感ある学校として「輝き」を放つようになったのは、日本福祉大学と一緒に美浜町に総合移転してからの歴史であったように思います。特徴とは、大学と同一キャンパス内に校舎を置き、青年期の一貫教育を貫きながら、美浜町に唯一の高等学校、62万人「都市」と言える知多半島において唯一の「私立」の高等学校として、地域に根ざしたユニークな学校づくりを進めてきたこと。「輝き」とは、普通科の学校として「どの子も伸ばす」教育に力を注いできたこと、と言えます。

どの子も伸ばす教育は、生徒の多様な進路を保障する教育のことを意味しますが、今日的な言い方をすると、知力だけでなく技術力や体力や気力(精神力)を含んだ、4つの「H」(Head,Hand,Health,Heart)に関わる総合能力を高める教育のことを意味しています。ここに今、傾注しています。

私は、これからの時代、一定の「覚悟」を持って教育に当たる必要があると思っています。ここでいう「覚悟」(preparedness)とは、文字通り準備ができている状態のことで、第四次産業革命の進行とかグロ―バル社会化への対応は、否が応でも青年期の準備教育において求められます。「ふくしの総合大学」に入って「ふつう(ふだん)のくらしのしあわせ」に貢献できる先導的人間(リーダー)になるためにも、準備をしっかりしておかなければなりません。「覚悟」には、建学の精神を踏まえた、揺らぎのない「信念」と、一つ先の発展段階を見据えた「先進」を行く志向(思考)が必要です。

地域に根ざし、世界をめざす「ふくしの総合大学」である日本福祉大学と共に歩む日本福祉大学付属高等学校は、「どの子も伸ばす」を合言葉に、時代の変化を見据えて、教育の質の向上に邁進していきます。まだ道半ばではありますが、文科省の言う知識、技能、思考力・判断力・表現力、学習意欲といった「確かな学力」の形成にも深く関連する「4つの力」の育成に「覚悟」を持って当たる所存ですので、皆様の変わらぬご支援・ご鞭撻をよろしくお願いいたします。

岩本 憲之
日本福祉大学付属高等学校
校長
岩本 憲之

すべての人の幸せに貢献しうる人材を

本校は1958年、名古屋市昭和区の大学と同一校地に、「日本福祉大学付属立花髙等学校」として創立されました。その後、校名の変更や長期間にわたる仮移転という試練を乗り越えて歴史を築いてきました。1982年には大学に先駆けて美浜の地に移転しましたが、移転後には、知多半島の各自治体当局、中学校の先生方、また地域住民の皆様の熱心な支援をいただいてまいりました。時々の保護者の皆様そして卒業生の方々のご支援が続いたことは申すまでもありません。こうした支援なくして、知多半島でただ一つの私立高校である我が校が60年の時を刻むことは困難であったと思います。改めて衷心より感謝申し上げます。お陰様で本校は、これまでに各界各地で活躍する約14,000名余の卒業生を送り出してまいりました。

学園の創立者であり付属高校の初代校長でもある鈴木修学先生は、昭和の初期、当時は不治の病と考えられ、社会の偏見や差別に苦しめられていたハンセン病患者を始めとして、戦争で親や兄弟をなくした子どもたちあるいは知的障がい児の受け入れなど、社会的弱者と言われる人たちの救済や教育に生涯を尽くされた方です。修学先生は子どもたちのそれぞれの長所をほめることによって自信を持たせ、一人前に育つよう尽力されました。修学先生の、分け隔てなく人間性を尊重するその温かい眼差しは、時代や学び舎が変わっても学園に脈々と受け継がれ、今日に至っています。

本校は創立以来「一人一人に行き届いた面倒見のよい教育」を掲げて教育活動を展開してきました。その蓄積の上に今、「どの子も伸ばす」を合言葉に学校改革に取り組んでいます。目標は「すべての人の幸せのために未来社会に貢献できる人材の育成」であり、未来社会を担うリーダーを育てたいと考えています。

学校改革の一番の重点は「学びの改革」です。特に英語を中心に据えて、ICT活用や対話的な学習を取り入れた授業改革を進めています。高大接続改革と新学習指導要領に対応し、生徒に豊かな進路形成を保障したいと思います。改革の二番目は部活動の質的向上です。生徒の思いに応えられる指導の向上に取り組んできました。スポーツと文化の花が咲き、参加する生徒、応援する生徒が一体となり、学校に一層誇りを持てるようになればと願っています。また、こうした教育活動を展開するための環境整備を60周年記念事業として行っています。視聴覚教室を改装し海外提携姉妹校との同時双方向授業を行える環境を整備しました。図書室と進路指導室を改装し、自主学習環境の整備と進学サポートの充実を図ります。

改革の歩みはまだ始まったばかりであり、その成果もごく初歩的なものですが、創立60周年を機に、建学の精神に言う「我如等無異」の一偈を今一度肝に銘じ、更に精進してまいりたいと決意しております。今後とも皆様のご支援を賜りますようお願いいたします。