ローカルな情報の ネットワーク化
● 佐々木
鯉江さん流のアプローチは,非常にローカルな情報をきちんと管理しておられるから可能なのだと思いますし,またそうした情報がますます重要性をもってきていると思うわけです.今はインターネットという,非常にローカルな情報にもグローバルにアクセスできるツールがあるわけですが,鯉江さんの持っている情報もそういう形で発信していただけると,我々にとっても便利になるのでは,と考えます.
● 鯉江
そういう使い方はありえますね.僕も一昨年,日本海の海岸線の計画の仕事をしましたが,僕は結局そこに1 回も出向かなかった.それはどういうことかというと,1 年間のそこの気象データ,衛星写真,航空写真,地形図,古い資料などをこちらで用意して,あとはこの情報や,もっているノウハウとのやりとりで,非常に短期間に,安いお金で,効率的にいい仕事ができたわけですね.そういう面でこれから僕たちは情報というのをフルに使っていきたいと思っているんです.
● 佐々木
少し昔であれば入手するのに非常に苦労した人工衛星のデータなども,ずっと使いやすくなっていますね.ただ,鯉江さんのその日本海のお仕事がうまくいったというのは,数値という言ってみれば抽象化されたデータが持っているリアルな現状を,鯉江さんのこれまでの蓄積によって実感として再現できるからなのですよね.それなしに,ただ数字だけでやっていくと,大きな失敗をする危険性もある.そこだけ気をつけていけば, 非常にローカルな情報が
デジタル化されて世界中に広がっている現在の状況は, 仕事がしやすくなる傾向はありますね.
● 鯉江
そうですね.ローカルな情報がネットワークされるとグローバルなものになるというあたりが非常に大事だと思います.僕は今, 自分たちの調査方法やコンサルティングをやるノウハウが,専門的な領域ではランドスケープや建物のデザインをする人たちに使ってもらえるし, 身近なところとしては,例えば教育にも同じように使ってもらえるわけですね.我々のやっていることをもう少しわかりやすい表現で, たとえば「この地域は冬はこっちからこのくらいの風が吹くけど, みんなはどう感じてる?」というような最初のきっかけとヒントを与えてあげると, 彼らがそこで簡単な測定をしてデータを蓄積していくわけですよ.
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それと僕たちの所やまた他の学校とネットワークでつなげていけば,ものすごくいい情報になるわけです.年々積み重ねれば,環境データブックになっていきます.だから,今僕の考えているのは,僕たちのやり方をネットワークによって教育だとか環境の調査にどんどん使っていただいて,外国と結ぶことも簡単にできてしまうので,情報社会のメリットを生かした環境データを展開したいということです.あとは僕たちも含めて,みんなが外に出て体感し,それと測定されたデータと感覚的に一体化することで,自分たちの身につくという感じはしています.
● 佐々木
例えば,海の真ん中にいて,今ここの状態を体で感じ,風速計の値をながめつつ,さらにランドサットなど様々なメディアでとったデータをモバイルでリアルタイムに手にすることをやるわけですね.そうした経験がある程度体にしみついていけば,情報も共有できて,効率よく使うことができます.可能性は大きいですね.
● 鯉江
すごく大きいと思うし,僕たちがここでやろうとしていることは,局地的なものととらえられてしまうかもしれませんけれど,実は海なんていうのは世界中につながっているわけであって,ここでやっていることはまた外国でも使えるし,内陸部でも使えるわけですから.そのために何も新たな施設を作る必要はなくて,学校などに働きかければいいわけです.
● 佐々木
以前ある市民グループが,夏の日の24 時間の気温変化を名古屋の栄や今池,東山公園,瀬戸といった複数の場所で1 時間毎に同じ測定方法でかなりきめ細かく測定した話を聞きました.その地点の上空を雲が通り過ぎた影響が出るぐらい見事なデータがとれて,その結果東山丘陵地の森林が持っている気象への影響力が実証できたわけです.こういうことが増えてくるとおもしろいですね.
● 鯉江
そうですね.例えば環境調査を仕事としてやると,一般的な会社だと9 時から5 時までだとか,日曜日は休み,台風だからやれませんということになる.僕たちはプロだけれど時間に制約されず,リスクがあるときでもいつでもやれますし,例えばヘリやセスナも使う.それとやはりボランティアだからできることもあって,両方が一緒になったときに,ものすごくおもしろいものができると思いますね.
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