JAM SESSION
STAGE 3

木の香りいっぱいのケアハウス「ほっとはっと」の食堂にて
● 佐々木
この食堂は外も中も喫茶店みたいですものね. 住居の方も, 廊下やホールが微妙に折れ曲がっていたり, 中庭があったりで, 実際の面積よりも広く感じますね. 人が触れるところはほとんど木ですし, でもこうした建物は一般に管理が大変といわれますでしょう?

● 河津
例えばどこからでも出入りできるので, 鍵の管理も面倒ですし, 木ですから床もすぐしみになってしまいます. でも, 細かいことを言い出したらきりがないですし, この建物がもっている全体的な雰囲気というか, 質を考えたら, 不便を乗り越えてお願いしますという感じになってしまうんですよね. その辺は職員に申しわけないのですけれど.

● 佐々木
「しょうがないわね」 という, ポジティヴなあきらめの感覚は, 理屈ですすめる効率的な仕事のやり方にはない, ある満足感に繋がるのかも知れないですね. そもそも都心に雑木林を作るのも, 理屈では説明できない話ですものね.

● 河津
そういう理屈ではきちんと説明できない私たちの想い, 「いいね」, 「大変だけれどやっぱり木がいいね」 という想いを, 自己満足で終わらせないで, 運動のようにして, 風にして送っていくことができるといいなと, 糟谷さんとも話して, 雑木林の基金を呼びかけてみたりもしています.

BACK


● 佐々木
ただ少し気がかりなのは, こういう場所に実際に来ればその良さはポッとわかる, という感受性をもっている人が必ずしも多くないのではないか, ということです. 良さは分かるけれどお金がとか, 管理が, というのではなく, そもそも良さ自体がわからない. 特に学生達と付き合っていると, 環境の質に対して直感的に響くアンテナを持っている人が確実に減っていて, 便利で楽で簡単なものの方がいいと思う人が増えているのでは, という心配があります.

● 河津
そういえば, 雑木林基金のお願いのチラシを見せたときに, 「木を植えてどうするんですか」 と言われて, すごいショックを受けたことがあります. もちろん 10 人のうち 3〜4 人からは 「すごい, いいことね」 と言われたり, 銀行員の方でも 「そのマインドはわかります」 と言われたりで, 確かにいろんな反応がありましたね.

● 佐々木
お話を伺っていると, 河津さん御自身がこうしたい, ああしたい, という生き生きとしたリアルなイメージが, フラワー園の魅力の源になっているのだとよく分かりました.

NEXT