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STAGE 2 |
国際的なネットワーク | ||
<佐々木> 少し話題を変えて, 伊藤さんは国際的にも面白そうなことをいろいろやっていらっしゃいますが, その中で, 絞りの話をお聞かせ願えますか. 有松で開いた絞りの国際イベントに始まって. <伊藤> 国際絞りシンポジウムといったと思うけれど, 1992 年の冬に開きました. アメリカ人で絞りを作品にしている人が有松に縁があって, その人達が絞りの国際会議をやりたいというので協力しました. 400 人くらいが集まるものになったんですが. <佐々木> その目的はどんなことだったのですか. <伊藤> 一つは, 絞りと言うのはとても単純な行為, つまり絞って染めるだけですから世界中にあるんじゃないかとおもって, これも絞り, あれも絞りと考えればそれで世界が繋がるんじゃないか. もう一つは技法自体が単純だということは簡単なものから複雑なものまで何でも作れる. これは作家が表現をする時に自由度が高いわけで, まだまだたくさん可能性を持っているんじゃないかと思ったわけです. 絞りを説明するときに, 今までは Tie and Dye といったのですが, この会議の中から Shaped Resist Dye といった新しい絞りが広まり出しました. 絞りの技法は 「染色パターン」 をつくることだけではなく 「立体形状を布に残す」 生地作りへと広がったのです. 絞りを昔からやっている人も, それでもいいということで, 結構面白くなっていったわけです. 三宅一生のところのデザイナーも加わって, 生地の後加工というのに繋がった. そんなことで有松での会議はまあ拍手で終わったんですが, イベントが終わると火が消えたみたいになった. ちょうどその頃ミラノに行く機会が割とありましたので, ミラノのデザイナーに絞りを見せたいと思い, 職人を連れて行きました. 染め屋とくくり屋というのは, いわば下職です. それでいろいろ問題もあったのだけれど, とにかく日本にはこういう素材があります, というのを見てもらいました. ミラノとコモでやって, さらにヨーロッパのあちこちで展覧会をやることになりました. ルクセンブルグでは日本との文化交流の機関に取り上げてもらったので, ファッションショーをやってもらいました. |
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<伊藤> トラブルもありましたが, つづけてやりたい, じゃあ次の国際絞りシンポジウムはインドでやろうということになりました. ガンジーの出身地のアーメダバードです. それを一昨年やって, 次は, 99 年 11 月チリのサンチャゴでやる予定です. <佐々木> あらかじめ計画されているというよりも, 言い方は悪いですが行き当たりばったり.でも, その過程でいろいろなネットワークができてしまっている, という感じですね. (その間の様々なエピソードは, 残念ながら紙面の都合で割愛します) 出発点の有松には, なにかその後変化はありましたか? <伊藤> 伝統的には絞りは基本的には柄づくりだったわけですが, それが立体的な形のまま使うというのが増えてきました. それは化学繊維と熱加工などの処理をへて可能になり, 洋装の世界に使われるようになりました. 全体ではわからないけれど, ある商店では浴衣の売り上げとこうした洋装用のアパレルの絞りの売上げとが半々くらいになったようです. パリコレクションやミラノコレクションなどの周り回ったものが有松に来ています. <佐々木> イッセイ・ミヤケのプリーツ・プリーズやいろんなシワ加工のようなものですね. <伊藤> そうですね. イッセイのも一部は有松に来ていると思います. <佐々木> すると, 国際絞りシンポジウムの意義はずいぶんと大きかったわけですね. <伊藤> 意義はあったと思いますよ. 要するに今まで互いに知らなかった産地同士が繋がったことと, 自分達で新しいものを作っていって, それがまた各地に広がるということはあったと思います. |