JAM SESSION
STAGE 2

<佐々木>
 今, 愛知県は万博や空港の話もあって, その中ではやっぱり国際的な新しいコンベンションセンターみたいなのができたらいいのにと思っている人がかなりいる様ですけれど, 私はそんなのは面白いと思わない. 常滑でもうすでにあるように, 古い窯場の工場を上手に使ったような空間でいろいろな人と会った方がもっといい話ができるような気がします.
<伊藤>
 そう. 常滑って凄くいいなぁって思っているのは, 町の中で家の中に窯をもって焼物やっている人がたくさんいるでしょ. あれはこの辺だと許してもらえないですよね, 火が危ないので. それが常滑では平気でやっていたり, 外国の方も山ほどいらっしゃるし, その人たちが造ったものがちょこちょこと置いてあったりして, そういうことがとても凄いと思う.
<佐々木>
 すでにいまある, そういう魅力的な場や空間が, 空港ができることで変わってしまって, 新しい 「何とか会館」 ができました. というのじゃつまらないと言うんですけれど, 現実は難しい. というのは, 今ある常滑の魅力を支えている運営とかシステムって, とてもルーズだから. 現にこの橦木館はある意味でとってもルーズ
<伊藤>
 ものすごくルーズ. (笑い)
<佐々木>
 ルーズさみたいなものを許容できる人って, 現代では意外と少ないと思う. もしこうなったらどうしよう, 5年という契約をしても無理やり居座られたら困るとか, そういう心配をする人は多いですよね. ルーズさというのは, 常識や信頼関係みたいなものを信じてれば全然平気だけれど, 性悪説みたいな考え方をすると成り立たなくなる.

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<伊藤>
 橦木館が1月1日にオープンして9日が僕の誕生日だったんで, その日に初めて店子の全員が顔合わせて, ここで鍋をやったんですよ. その時そのうちの一人が, これから5年間一緒にやるんだからみんなでルールを決めたいと喋りだした. 僕はルール決めるの嫌なんだって言たら, じゃあ, 「人に迷惑を掛けずに仲良くやっていこうね」 ってことになった. でも僕はそれも嫌だって言ったんです. 僕は人に迷惑を掛けます, それを許し合える仲にしたい, これをルールにしてって言った. そうでないと窮屈でやっていけない. コーヒー飲みたくなっても喫茶店へ行くのが嫌な時は台所に入るし, ひょっとしたら黙ってコーヒー飲んじゃうかも知れない. でもそれを勘弁してもらえる仲にしてくれるなら, みんな上手くいくんじゃないか. それを決めたんです.
 先にルールをそれを決めて守っていくというのは, 生活の中にあんまりないような気がする. 役所が管理したらこんな風には絶対ならないだろうし.
<佐々木>
 ここの管理はなんとなく何とかなっている, という感じですよね.
<伊藤>
 そう. よく分からない人がなんだか集まってきてやっている. 今庭で植木の手入れをしている若者もプロではなくで, 誰かの友達. 喫茶店も以前は火曜水曜が休みだったけど最近年中無休になった. それは近所の夫婦が二日間だけマスターをやってくれるようになったから. まあトラブルもあるけれど何とかなっています.

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