JAM SESSION
STAGE 2

空間の質と会話の質
  
   
伊藤 晴彦・いとう はるひこ
京都市立美術大学卒
トヨタ車体(株)にて車のデザインを担当
昭和63年退社  (株)ATデザイン設立
現在は工業デザイナーおよび地域活性化事業支援において活躍中
<佐々木>
 みんながいつでも入れる番茶の家という意味では, 以前の栄のビルの事務所もそうだったわけですが, でも今の橦木館は, 圧倒的に建物の質が変わりましたよね. この変化の影響はやはり大きいですか.
<伊藤>
 それは大きいです. 僕自身が変わりました. あのビルの四角い窓の中に入ってると, 会議をやってても, 堅いんです. 凄く簡単に言うと機能的なんです. 時間通りに終わって, 結論はきちっと出して. でもここに来るとずぼら.
<佐々木>  (笑い)
<伊藤>
 会議の時間はまず延びる. 1番長い取材は朝の9時半に見えて, 帰ったのが8時頃. 晩飯食って帰りましたからね. やっぱりね, どういうのかな, 機能的なものの付き合い, 処理の仕方というのと, そういうことのない空間ってありますよね. そこでは人がホッとする, 何かちょっと枠が外れる感じがする. いい人といい空間で出会って, いい話ができる, この3つ揃っていい結論をお互いがもつ. ここで行われる会議は決定事項の伝達会議ではないから本当の話合いの場, そんな場所じゃないのかなというふうに今は思ってます. どうもここで難しい会議ってあんまりやられたことがないような気がします.

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<佐々木>
 実は丁度2週間ぐらい前に, この部屋をお借りしましたよね. あの時はどういう話題だったかというと, 万博の計画のことでした, 私は今万博の会場計画を考えるメンバーに入っているんですが, 気がめいるような話題ばかりなんですよ. でも物事はどんどん進んでいるので, 少しでもましなものにするにはどうしたらいいかをある程度具体的な提案として出さないといけない. それには私一人では力不足なので, 全くプライベートで友達のエンジニアに 「ちょっとを知恵貸して」 と時々話をするんです. この間は他の会議室が使えなくて, ここでやりましたが, 二人のエンジニアがみえて, ここでそういう話をしたのですけれど, なんだかぎこちない. 話題のせいもありますが, その人達がこういう場に馴れてない感じがしました.
 要するに彼らは日々四角いビルのなかで役所の人と打ち合わせをして, という生活が続いているでしょう. だから急にここへ来ても何となくその気分が抜けないというか, 逆にその自分の気分とこの空間とのギャップみたいなので, ちょっとおどおどしてしまうのかな, という感じがありました. 何回かやればだんだんと馴れてきて, ある意味では凄くクリエィティブな話がこの場でできるようになるのかと思いました.
<伊藤>
 ここでは機能的な, 合理的な, 効率的な仕事はできない, 本当そう思いますね. でも, 今はその事も大切な仕事だと思っています.
<佐々木>
 つまり片付けるための仕事はできないですよね. これはこう処理してこういう結論にしましょうという仕事には向かないかも知れない. でも, 何かちょっとでも芽が出るようなことも仕事とよべば, そういうことはできるかもしれないですね.
佐々木 葉・ささき よう
総合理工学研究科前期博士課程修了
工学博士(東京大学)
情報社会科学部 助教授
専攻は都市景観論、景観デザイン

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