4. 環境情報に関わる近年の動向

ここ 1 年から 2 年の間に, 自然環境ならびに社会経済状況に関するデータの整備と汎用性のある形式での販売や配布が急速に進められてきた. たとえば, 次のようなものがあげられる.

1. 数値地図
国土地理院が所有している地形等に関するデータの数値化が進められ, 50m メッシュ, 250m メッシュを単位とした標高や土地利用に関するデータが一般に販売されるようになった. 特に昨年からは, CD−ROM媒体を用いた販売が開始され, 価格面でも従来の 1/10 以下となっている. 現在磁気媒体で販売されているおもな数値地図としては, 50m メッシュ標高, 250m メッシュ標高, 1/10 細区分土地利用データ, 1/25,000 地形図および 1/200,00 地勢図の画像データ (ラスターデータ) などがある. さらに, 都市計画基礎調査で用いられている 1/2,500 都市計画基図での街区データや公共施設等をポリゴン化した数値地図 2500 (空間データ基盤) などのように, GISでの利用を前提とした空間データも広く販売されるようになった.

2. 国勢調査
国勢調査については比較的早くから, メッシュデータあるいは調査区単位での統計データが提供されてきたが, 現在ではCD−ROMによって容易に利用できる.

3. 農業センサス
国勢調査と同様に 5 年に一度実施されている, すべての農業集落を対象とした集落カード調査の結果も, CD−ROMで配布されており, 1970 年以降の集落単位での詳細なデータを容易に取り扱う事ができるようになった.

4. 社会人口統計体系
前述の国勢調査を含め, 指定統計やその他の公的な統計調査を大幅にカバーした統計データが市町村単位で配布されており, 市町村単位での指標化や経年動向, 地域間比較が容易に行える.


5. 環境情報システムの方向性−当面の研究課題

環境情報システムの活用した地域環境づくりを進めていくうえで, 当面, 次のようなシステムの構築を目指している.

(1) 流域圏モデルの構築
生命の維持に不可欠な水の流れに着目した 「流域圏」 の概念は, 既に 20 年以上前から提起され, 全国総合開発計画等においても述べられている. しかし, 空間的な 「流域圏」 は設定できても, その圏域が社会的にどのような意味を持ち, 環境保全の立場からはどのような地域管理が望ましいかについての, 実証的な研究は進んでいない. 知多半島においても, 愛知用水を通じて木曽川の恩恵に預かっているが, ともすれば, 下流は水の恩恵を一方的に受け取るだけで, 逆に上流に対して様々な犠牲を強いている事が少なくない. しかし, 環境資源の制約の中で, 都市の過密問題と農山村の過疎問題を解決し, 資源・エネルギの適正な分配のあり方を検討していくためには, 「流域圏」 が実体としてどのような意味を持っているかを具体的に検証していくことが重要となる.
現在, まず知多半島, さらには木曽川流域を対象として, 流域の自然的条件, 社会経済的条件に関するデータのシステム化と, サブ流域間での相互関連性を構造化することをねらいとして, データの収集とデータベース化, 解析を行っている.
1. 木曽川流域圏のブロック化
自然条件, ダム等による取水・放流等の状況に基づくサブ流域の設定
2. 物質の移動
上水道・工業用水・農業用水などの取水関係, 導水関係/廃棄物処理
農業生産物/工業生産品の販売・移動生物の移動 など
3. 人の移動
通勤・通学/社会的移動 (転入・転出)観光・リゾート・レクリエーション/祭り・イベント/村おこし など
4. 情報の移動
通信/地域づくりの情報提供/水源情報/広域的な行政運営など 
5. 歴史・文化的な地域間のつながり
祭り/伝統的行事/近世以降の物流など
6. 人々の意識と環境の状態の関係づけ
「流域圏」 に対する都市住民の意識/農山村住民の意識
上流・下流での環境資源管理に対する意識の差など

この研究については, 知多半島総合研究所, 課題研プロジェクトとも連携しながら, 情報社会科学部, 経済学部の先生方と共同して調査を進めている.

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