養老断層:
―名古屋の西方約 30km, 平野部は突然, 山地に変わる. “養老の滝”の急崖をもつ養老山脈である. 名神高速道路を通って名古屋から京都へ行く途中, 養老サービス・エリアで休憩をとってこの地形を眺めると, その特徴がよくわかる. 外国から来たお客さんを案内する時, いつも, これが我が国で見られる典型的な断層地形だと説明することにしている. この養老山脈の東山麓部には, 扇状地も発達している. その扇状地の下に NNW-SSE に走る断層, 養老断層がある.

伊勢湾断層:
―敦賀湾−伊勢湾構造線は甲楽城断層からSEへと延び, 伊吹山の山麓をめぐって, 関が原を通り, 養老断層へと続く. そして, 濃尾平野の西縁を通って, 名古屋港から伊勢湾に入り, 伊勢湾断層となる. さらに, 南方へ延び, その後, 伊勢湾口を経て, 太平洋へ抜けるとされた. この構造線は, それに沿って越前海岸や養老山脈のような顕著な地形的特徴が見られるだけではない. 『それは渥美半島から志摩半島にかけてほぼ東西に延びる日本列島基盤の地質構造を横切って, それをずらせている』 と指摘されてきた. 地形的にみても, また, 基盤構造からみても, これだけ明瞭な特徴をもった構造線はきっと大きな意味をもつであろうと考えられてきた. 何時頃できたのであろうか. 今でも活動的であろうか. そして, 近い将来, それは活動するであろうか. 内海断層:
―知多半島の伊勢湾側には, 古くからいくつも海水浴場がつくられていた. 夏は親子連れで賑わっている. 美浜町の野間海水浴場に行く時は, われわれは宿泊の準備をして出掛けたものであった. 広い砂浜で自炊し, テントを張って夜を過ごした. しかし, その南の内海水浴場には砂浜はほとんどない. そこには急峻な崖が迫ってきている. 知多半島全体を北から南へと眺めてみると, 南の端, とくに南知多町西部に山地地形が発達していることがわかる. そして, それに続く伊勢湾の海底地形もやはり陸地の地形に平行して急に深くなっている. 最近の地球物理学的方法により, NW-SE の海岸線に沿って内海沖に断層のあることが確かめられた. いわゆる内海断層である.


神島断層:
―渥美半島と志摩半島の間, 伊勢湾口に位置する小さな島, 三島由紀夫は彼の青春小説をこの島を舞台にして書き上げた. “潮騒”の 「歌島」 である. 物語のはじめに次の記述がある. 「ここからは, 島がその湾口に位いしている伊勢湾の周辺が隈なく見える. 北には知多半島が迫り, 東から北へ渥美半島が延びている. 西には宇治山田から津の四日市にいたる海岸線が穏見している.」 彼は, 1953 (昭和 28) 年3月と同8月の2回にわたり, 神島を訪れ, 翌 1954 (昭和 29) 年6月にこの作品を出した. そして, 同年暮れにこの“潮騒”で第1回新潮社文学賞を受賞している. この神島は堅硬な岩盤からできていて, 北部には三波川に属する変成岩が分布し, 南部には, 秩父帯に属する堆積岩類が露出する. 両者を境して, その間に ENE-WSW に走る断層, 神島断層がある.
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