|
松尾 稔・まつお みのる
京都大学大学院工学研究科修了 工学博士(京都大学) 平成10年4月 名古屋大学総長
専攻は地盤環境工学
|
|
<松尾>
手法はそれぞれ違うと思いますし, ローカル, グローバルと視点も様々な取り方があると思いますが, まず学問にしても技術にしても発端は何かといえば使命感とか感動, そういったものがどうしても必要なんですね. 例えばこのごろの若い人はコンピュータの前に座ってCADで絵でもかけば空港や自動車ができると思っています. でもそんなことは絶対にありえない. 自分で土や板をさわってみずして, 空港や橋や自動車ができるわけがない. 発端はローカリティが非常に強いのです.
この点は皆大間違いしていて, 「技術は科学の応用」 などという. 自分のまわりの物理学, 化学, 数学, 生物学の成果をならべて, 組み合わせを色々考えて, そんなものから自動車ができますか?そんなものからフォードの自動車やワットの蒸気機関ができるわけがない. 父母のつらい労働の後ろ姿をみてなんとかしようと奮起したり, すばらしい人に出会って感動したり, 社会的な強い使命感を抱いたときに技術は生まれる. そうしたリアリティがないと何事も生み出すことはできないはずです. さらにそこから政策的なコンセプトを立ててリーダーシップをとって自らの課題を実現させるべく, 様々な手法や信頼関係に基づく人脈を通じて何事かを成し遂げる, そういう人材が大学には必要でしょう.
<佐々木>
今おっしゃられた, リアリティという点には大変興味を持ちます. あることを成し遂げていく際には物事を抽象化したり, あるいは様々な人達を説得してもいかないとならないわけですが, その過程で重要なのはリアリティをどう保持するかということにあるように思います.
BACK
|
|
 |
今技術としてのバーチャルリアリティは高度に進んでいますが, コミュニケーションの様々な場面ではもっとシンプルでかつリアルな方法はないのだろうか, と考えます. 日常のコミュニケーションも含めて, 情報のやり取りという面で先生がお考えになっていることはありますか?
<松尾>
今後も価値として重要なのは情報だと思います. しかし現在は情報のテクニカルな面が先行しすぎていて, また情報も過多な面がある. 世界各地の研究成果などがEメールで瞬時に入ってくることもありますが, 一方インターネットで好ましくない情報があふれるということもおこっている. だからといって規制が良いことだとは思いません. 抽象的ですが, 大事なのはテクノロジーと文化の整合性や融合でしょう?文化というと芸術的イメージが強いかも知れませんが, 私の言う文化とは, これは梅棹忠夫さんの定義ですが, 生活の仕方一般のことです. この文化というものを組み込んだ情報提供の仕方をテクノロジーとして扱っていくべきではないかと思います. しかし今のところは入ってくる膨大な情報を自分で選択するしか方法がない. 私の場合, 日本経済新聞は隅まで読むが, 他紙は大見出しやスポーツ欄くらい, それも阪神が負けたら見ません. それから2, 3の雑誌を見る. テレビも一部を除いてほとんど見ない状態です. 膨大な量の情報を前にして, 多くの人は選択する理屈を持っていないようにみえるが, それを各自で考えないといけないのじゃないですか.
|
 |
佐々木 葉・ささき よう 総合理工学研究科前期博士課程修了 工学博士(東京大学) 情報社会科学部 助教授 専攻は都市景観論、景観デザイン |
|
NEXT
|