取組のねらいと特徴

1.本取り組みの背景

本取組の主体となる日本福祉大学 社会福祉学部では、FD(ファカルティ・ディベロプメント)などを通して教育改善の検討を重ねてきました。とりわけ社会福祉士に関する法改正に伴う新しいカリキュラムの導入などをひかえて、本学らしい社会福祉教育のあり方が議論されてきました。

専門教育としては、より実践力の高い社会福祉専門養成職が社会的要請となる一方で、広く社会福祉を学ぶことは市民社会や共生文化をつくる主体者を育むことであり、これら双方の視点は社会福祉学部にとって重要な使命と考えていました。また、これまでの在学生へアンケート調査などから、2年次教育のあり方がひとつの課題となっていました。1年次の初年次(導入)教育、3・4年次における専門教育、この間をつなぐ2年次の過ごし方も一つの課題として議論されてきました。

それらの議論を通して、「社会福祉」人材の裾野を広げ、「2年次教育」の充実を可能とするサービスラーニング教育プログラムを導入することにしました。

社会貢献活動を通して学ぶ実学は、体験したことを意識化させ、今、社会福祉を学ぶ意欲を喚起することにつながります。また、地域の人と関わり、つながる経験は、コミュニケーション能力を向上させ、自らの役割と責任を自覚し、何かしら自分ができることをおこなう行為に展開していきます。この学習が、地域社会への問題関心を高め、専門教育へのつなぐ「力」となり、将来、学生達が卒業したあとも一人のよき市民として地域を担える人材を要請していくことにつながっていきます。

2年次教育の充実

体験学習の拡充

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2.プログラムのねらい

 本学部のサービスラーニングプログラムは、1年次のゼミナール科目「総合演習」と3・4年次のゼミナール科目「社会福祉専門演習Ⅰ・Ⅱ」をつなぐ2年次の「社会福祉基礎演習」に導入され、2017年度カリキュラムより「フィールド実践演習」に継承されました。

 2年次のゼミ科目(社会福祉基礎演習・フィールド実践演習)では、1年次で身につけてきた幅広く物事を捉え、読み、書き、表現するという力を、さらに深めて確実なものにしていくことを一つの目的としていますが、こうした2年次に身につけるべき力を「自己形成力」と表現してみました。自己形成力とは、学生自身が市民社会の主体者として生きていく基礎力(生きる力)であると同時に、社会福祉専門としてキャリア形成していくための基本となる力です。本プログラムでは、この自己形成力を発展的に捉え、下記3つの力の総称としています。

  • 真実を探求する『まなぶ力(学習意欲)』
  • 慈愛を他者と共感できる『つながる力(対人関係能力)』
  • 献身によって問題を解決していく『やりとげる力(問題解決能力)』

 これは、本学の教育標語である「真実・慈愛・献身」の3つの言葉を、具体的に身につけるべき「力」として位置づけたものです。

 学生が、「市民性を一人の市民としての自覚を育み、市民として地域の問題解決に連帯して取り組んでいく力(Civic Engagement:シビック・エンゲージメント)」を身につけていくことは、これから市民社会を形成していく際に重要となり、このことは、先に述べた自己形成力と通底するものです。本プラグラムでは、「市民性」を育む、あるいは市民社会の担い手として「自己形成力」を高めていくことを教育プログラムの狙いとしています。具体的には「まなぶ力」・「つながる力」・「やりとげる力」という3つの力を確実に身につけていくことが目標となります。

本学部のサービスラーニングの教育目標

 地域社会の中で義務と責任を果たしていくことが、一人ひとりの自由と権利を保障していく民主主義の基本であり、一人ひとりが市民社会を担う一員としての力(市民性)を育むことは、これからの社会にとって大切な課題であります。

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3.本取組の先駆性

本取組の先駆性はとして、次の3点で挙げられます。

  • 初年次教育と専門教育をつなぐ「2年次教育」を重視した教育活動の展開であること。
  • 知多地域の教育力を活用し、かつ学生の地域貢献活動を通した新しい協働の構築をめざしていること。
  • 文部科学省による「教育GP(質の高い大学教育推進プログラム)」に採択され、社会福祉系大学では全国で初めて、本格的なサービスラーニングに取り組むこと。
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4.プログラムの特徴

特徴1:「市民性を育む」にあたっての3つの柱

1)「2年次教育」を意識したこと
  • 講義科目 ⇔ 演習科目 ⇔ 実習の体系化・融合
  • 多様なキャリア形成を意図した学習への動機付け
  • 社会福祉専門職の基礎力の形成
2)NPOとの協働による学び
  • 地域の問題解決をしているNPOの活動に直接触れること
  • NPOの活動のミッションや活動内容を学生達が触れることが市民性を育むきっかけになる。
  • 単なる地域の福祉力を高めるのでなく、地域をよりよくしていくための学びをめざす。
3)知多地域との協働
  • 大学のメインキャンパスにある知多地域と協働し、地域の教育力を大切にしている「地域サポートちた」との協働と協定

特徴2:知多半島のNPO法人のネットワークを活かした教育プログラム

 市民性を育むためには、地域でのボランティア活動やさまざまな市民活動への参加などが考えられます。  本プログラムでは、NPOと協働した学習方法を選択しました。その理由としてNPO活動は、地域のなかのニーズに気づき、それを解決していくために自分たちで立ち上がった団体であることが挙げられます。NPOの活動は、行政に依存したりせずに市民として何ができるかを考え、自分たちの活動が何のために必要なのかという使命(ミッション)がとても明確です。知多半島には、こうしたNPO活動が多くあり、そうした方達の協力を得ながら、このプログラムを推進していくことが本プログラムの目的に叶うことになります。

特徴3:トライアングル・リフレクション

 本プログラムは、活動ごとの「ふりかえり(リフレクション)」を重視し、その時の「気づき」を積み重ねていくことで「自己形成力」と「市民性」を高めていきます。その結果を個人の内省だけで終るのではなく、グループデッスカッションやポスターセッションなどのいろいろな機会を通して「表現」させていきます。つまり、やりっぱなしの活動ではなく、ふりかえりを丁寧に繰り返し、体験の意味を深めながら学習効果を高めていきます。  このふりかえりは、教員の主観だけに陥らないように多面的な評価指標が必要となります。そこで、『学生』『NPO(活動先)』『大学』の三者による「トライアングル・リフレクション」を導入しました。三者(学生、活動先、教員)が相互に企画から評価までを共有しながら、本プログラムの有効性を相互評価していきます。

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5.本プログラムの評価方法

 サービスラーニングによって育む力は、「自己形成力」です。よって自己形成評価を中心にした学習者による総合評価(reflection:リフレクション)が必要になります。この場合、教師による評価は、その学生自身が自己形成評価をできるようになったか否かを、「絶対評価」によってみることです。つまり「相対評価」ではないところに特徴があります。  絶対評価をしていくためには、教師の主観だけに陥らないように多面的な評価指標が必要です。そこで本取組では「トライアングル・リフレクション」の実施と、それによる総合的な評価体制をつくりました。ここでの総合評価とは、①学生の「自己形成力」の達成度、②プロクラムに関与した教職員の介入・支援のあり方、③プログラムの効果、④体制・組織の課題について点検、検討を含め考えたものです。 

「自己形成力」の達成を評価する視点と方法

学生個人 ポートフォリオを活用。
ポートフォリオを活用したリフレクションを重視する。
学習者自身の自己形成評価
1.自己変容
2.獲得した力
3.今後の学習への展望
グループ間 クラスの学習者同士の相互評価を大切にする。
グループディスカッションとメッセージシートの活用。
1.その人の優れていた点
2.その人から助けられたこと、教えられたこと
3.その人へのメッセージ
学生と活動先 活動先からの活動評価を受ける。
1.活動の効果
2.活動の改善点
3.活動への期待
学生と教員 教員による学習支援
1.学生の変化(気づきの促し)
2.学生に必要な学習支援(知識、技術)
3.今後の学習むけたアドバイス
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