このページのメインコンテンツへ移動
研究所員一覧
  1. ホーム
  2. 研究所員一覧
  3. 所員コラム
  4. 第8回 「日の出」

知多研コラム

第8回 「日の出」

 四日市に育った私が、初めて知多半島を意識したのは、日の出の観察の時でした。小学校5年生くらいだったでしょうか、宿題の観察をしに海岸に出たものの、山の稜線をくっきりさせながら昇る太陽に、ちょっぴりがっかりしたのを覚えています。太陽は海から出て、山に沈むというイメージだった・・・。あれが知多半島。知ってはいたのですが。

 知多半島の人々にとって、太陽はどこから出るイメージでしょうか。東側では渥美半島から、西側では知多半島の山からということだと思いますが、南端では?

 師崎の羽豆岬が、現在初日の出鑑賞のスポットとなっているようです。その写真を見ると、残念、水平線というわけにはいかないようです。遙かにある島々が・・・。とは言ってもイメージとしては海から昇る太陽ですね。

 江戸時代の知多半島の日の出鑑賞については今のところよくわかっていません。師崎の羽豆崎については、天保十五(1844)年に刊行された『尾張名所図会』(画=小田切春江、文=岡田文園・野口梅居)に、その眺望のすばらしさが描かれています。西は伊勢国の朝熊岳・志摩国の日和山、東南は近くに篠島や日間賀島、遠くに三河国の佐久島・伊良古崎、さらには好天であれば富士山も見える、とあります。日の出の様子もひとこと述べておいてほしかったですね。尾張の国で海から昇る太陽を眺められるのは、島々を別として、ほぼここからだけなのですから。

 ともあれ、元日に神事を行う神社は多くあります。大晦日から元旦にかけて、神主や村のおもだった人々が、社に籠もったり、禊ぎをしたり、神事の準備にいそしみました。そのあいまに初日を見、新しい一年を実感したこともあったのではないでしょうか。

日本福祉大学知多半島総合研究所
歴史・民俗部 研究員

鈴木 えりも