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知多研コラム

第2回 「タコ」

 ワールドカップサッカー南アフリカ大会も、スペインの初優勝で閉幕しました。日本のサッカー解説者やジャーナリストの予想や解説のいい加減さに比べて、ドイツの水族館で飼育されているタコのパウル君、ドイツが出場する試合と決勝の結果を見事に的中させ、話題をさらいました。

 知多半島でタコといえば、現在は日間賀島でしょうか。港ではタコのオブジェが迎えてくれます。50歳代半ばより年配の方には、長浦の海水浴場でしょうか。名鉄常滑線長浦駅のすぐ海側にあった海水浴場には「ターちゃん」の愛称で知られたタコのオブジェがありました。名古屋鉄道は新舞子に次ぐ海水浴場として長浦海岸の開発を進め、1927年にタコのターちゃんが造られました。名古屋タイムス・ライオン歯磨・長浦観光協会が選定した「長浦小唄」には「誰を招くかあの蛸入道、沈む夕日にほおそめて」と歌われています。長浦は1936年からは高級別荘地として分譲され、今もわずかながらその名残を見ることができます。1959年の伊勢湾台風、1962年からの臨海部の埋立で、長浦海水浴場とともにターちゃんも姿を消しました。ターちゃんは砂浜に埋められたという話も聞いたことがありますが……。

 ちなみに7月2日はタコの日です。夏至から11日後の半夏生(だいたい7月2日ごろ)にタコを食べる習慣が関西の一部地域であったことに由来します。吸盤で吸い付くタコと同じように田植え後の稲が大地に根付くようにとの願いと、夏バテ防止のねらいがあるようです。習慣はともかく、半夏生ころからがタコの旬です。江戸時代には、タコの足を薄く小口切りにして出汁と溜でさっと煮た料理に、桜煎(桜煮)という風流な名前が付いていました。出来上がりの色と形からの連想です。でも、この季節、冷えたビールにタコの唐揚げがいちばんかもしれません。

「観光知多」より

当時の長浦海水浴場のターちゃん

日本福祉大学知多半島総合研究所
歴史・民俗部

准教授 髙部 淑子