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#66 大学生の学修支援

多様な個性を受け止め
卒業までの道のりを支える。

(株)エヌ・エフ・ユー 勤務
(1999年3月 日本福祉大学社会福祉学部社会福祉学科卒業)

橘 淳史さん

橘 淳史さんは日本福祉大学の卒業生。2002年4月、日本福祉大学グループで大学運営を多角的にサポートする(株)エヌ・エフ・ユーに入社。2023年より学修支援コーディネーターとして学生たちのサポートに取り組んでいます。橘さんに、学修支援の取り組みや課題、展望について話を聞きました。

社会課題

大学教育のユニバーサル化と学力の多様化。

 大学教育のユニバーサル化とは、アメリカの教育社会学者マーチン・トロウが提唱した「トロウ・モデル」に基づく概念です。高等教育(※)は「エリート段階(就学率:15%未満)→マス段階(50%未満)→ユニバーサル段階(50%以上)」へと量的に拡大するに伴い、教育の目的・機能、内容・方法、学生の選抜基準や組織特徴が質的に変容すると考えられています。
 日本では、1977年に短大・高専・専門学校を含む高等教育進学率が50%を突破。2023年には、過去最高の87.3%を記録しました。このうち大学の進学率は2009年に50%を超え、2023年に57.7%と過去最高を記録しています。このように大衆化、ユニバーサル化が進む日本の大学では、新しい学部が次々と開設され、入学時の選抜方法も多様化。進学する学生の学力や興味関心も多様に広がってきました。とくに学力については、90年代後半以降、大学生の学力低下も指摘されています。今後18歳人口が減少することを見据えると、各大学ではさらに幅広い学生を受け入れていくことが想定されます。多様化する学生を受け入れ、大学教育の質の水準を維持していくために、種々の学修支援に取り組む必要性が高まっています。

  • 中等教育(中学校・高校)を修了した後に学ぶ、学校教育の最高段階の教育です。大学や高等専門学校、専門学校などが含まれます。

参考資料:「時事用語事典-イミダス」ほか

INTERVIEW

給付型奨学金を受給している学生のサポート。

日本福祉大学の学修支援コーディネーターの活動内容について教えてください。

一つは、日本学生支援機構(JASSO)の修学支援新制度を利用している学生の支援です。この制度は2020年度からスタートしたもので、授業料減額(授業料等減免)と、返済不要の給付型奨学金の支給を受けて、卒業まで安心して学ぶことができます。ただし4年間、継続して支援を受けるには、1年ごとの成績を日本学生支援機構に報告しなくてはなりません。成績が悪ければ、奨学金の給付と学費減免がなくなるので、退学を余儀なくされる学生もいます。そうならないように、受給者の学修をサポートしています。

具体的には、どんな学生をサポートしているのですか。

奨学金を受給している学生の多くは、自主的に学んでいるので問題はありません。私たちが対象としているのは、学んでいく上でつまずきやすい人たちです。たとえば、基礎学力が不十分だったり、学習に対して明確な目的を持てない人。また、周囲になじめず、居場所がないと感じている人やコミュニケーションに困難を感じている人も対象になります。こうした学生たちの一部は学ぶ意欲を維持するのがむずかしく、だんだん講義に出なくなる傾向があります。講義の出席日数が減り、成績が低下すると「警告」が出て、それが2年連続になると「停止」もしくは「廃止」の判定となり、奨学金の給付と学費減免がなくなります。そこで、私たちは受給者の中から対象者を定め、定期的な面談を通して、日常的な学修習慣、生活習慣をフォローしています。

こうしたサポートはどの大学でも行われているものでしょうか。

他大学の動きをすべて把握しているわけではありませんが、この給付型奨学金の学生に対する支援体制は、比較的新しい取り組みかもしれません。本学ではこの給付金制度が始まるタイミングで、「学習でつまずく学生が出てくるリスクがある」と予見して、いち早く現在の体制を準備したと聞いています。

学生が学生を支援する仕組みづくり。

奨学金の学生支援のほかには、どういった取り組みをしていますか。

私たち職員以外にサポートの輪を広げるために、学生によるピアサポート組織「学修支援サポーター(学サポ)」を運営しています。クラブやサークルに所属していない学生は、頼る先輩がいなくて孤立する傾向にあります。そのような学生に対して、先輩から気軽に履修や学生生活についてアドバイスできる環境を用意しています。学修支援サポーターの制度を始めたのは2021年ですが、ちょうどコロナ禍の真っ只中で学生の孤立化が深刻になり、なんとかして学生たちとのコミュニケーションを図っていきたいという思いがあったようです。

学修支援サポーターはどのように集めていらっしゃるのですか。

学生の皆さんに声をかけて募集しています。やはり福祉大学なので、人に役立つことをしたいというボランティア意識の高い学生が多いのか、多くの協力を得て、皆さんとても熱心に取り組んでくれています。たとえば「この先生の講義に興味を持って選択したけれど、予想以上に難解な内容で…」といった相談に対して、「この先生の講義は確かにむずかしいよね。でも、こんなふうに要点を絞って勉強すれば理解できるし、大丈夫だよ」といったアドバイスを提供してくれています。これは、先輩だからできる助言ですから、非常にありがたいですね。

先輩による対面サポートはどこで行っているのですか。

全学教育センターにフリースペースがあるので、そちらで行うこともあります。このスペースでは私たち学修支援コーディネーターが常駐していて、学生たちの履修相談やゼミ選択の相談、アルバイトの相談などを受けています。必要に応じて学サポの先輩を紹介し、アドバイスしてもらっています。このフリースペースの運営も、私たち学修支援コーディネーターの活動の柱になっています。

苦手を克服するだけではなく、得意を伸ばす学修支援を。

学修支援に関わるなかで、日本福祉大学のOBとしての経験を活かしている部分はありますか。

私自身、出来のいい学生でなく、立派な目的意識をもって学んでいたわけでもありません。ですから、学習でつまずきやすい学生の気持ちはある程度理解できます。面談の日時に顔をださなかった学生に対しても、咎めるようなことはないですね。問題を抱える学生はスケジュール管理ができない人が多いのですが、頭ごなしに叱るのではなく、まず状況を理解したうえで一緒に改善策を考えていくよう心がけています。寄り添いながらも、社会に出るうえで必要な“最低限の基礎力”を身につけられるよう伴走する姿勢を大切にしています。スケジュール管理ができなくても仲間がいれば、「掲示板にこんなことのっていたぞ」というやりとりが必ずあると思うんですが、孤立傾向のある学生はその機会もなく情報を収集できなくなるようです。

とても気の長い支援が必要なんですね。

そう思います。私はここに配属される前、障害者の就労支援に携わっていたのですが、そこでの経験も今の支援に役立っています。障害のある方と関わるなかで「できないことは誰にもでもある」ことを学びましたし、できない部分だけに注目して自信を失わせるのではなく、できる部分を土台にしながら、学修の基礎となる力を着実につけていく——そんなバランスを大切にしています。同じように学修支援でも、苦手なところを克服するだけでなく、できることを伸ばしながら学修の土台を整えることが大切だと考えています。たとえば、「暗記中心の筆記問題は苦手だけど、文章を書く力がある」という学生には、レポート試験の科目の履修を増やすようにアドバイスしたりしています。

連携と居場所づくりで、学修支援を広げていく。

学修支援の成功事例があれば教えてください。

図書館との連携に力を入れています。高校までの「学習」と違い、大学における「学修」では、事前、事後の学びが重要なため、図書館の有効活用は必要不可欠です。たとえば、レファレンスサービス(図書館の資料を使い、調べものをサポートするサービス)や図書館が主催する「レポート講座」の協働などで、学生が図書館を利用するよう促しています。いい学修習慣が身につく学生は、図書館を上手に活用しているように感じています。

なるほど、学内の組織をうまく活用し、連携する取り組みが効果を上げているのですね。

そうですね。横のつながりはとても重要なので、学内でうまく役割分担と連携ができるように進めています。たとえば、メンタル不調の学生に対して「学生相談室」を案内したり、学修支援コーディネーターの役割を超える内容の事案に関しては、必要に応じて「学生課」や「学部事務室」に報告しています。今のところ、その後の対応は他部署にお任せしていますが、今後は必要に応じて一緒に取り組んでいくケースがあってもいいのではないかと考えています。

最後に、今後の展望をお聞かせください。

「教える」ためには「教えられる」側の実態把握が必要です。そのため、私たちも含めた学内の各組織が情報共有し、連携していくことが大切です。たとえば、あらかじめ入学する学生の背景(不登校経験、対人関係の不安など)を確認し、早い段階から全学的な支援体制がつくれれば理想的です。とくに学修に関しては、入学前に文章力を確認するなど、基礎学力を確認して、その結果に応じた仕組みができるといいですね。そのほか、キャンパスの居場所づくりも大事だと感じています。全学教育センターのフリースペースには、ポットや電子レンジもあって簡単な飲食もできるし、私たち大人が話し相手にもなります。そんな居心地のよさから集まってくる学生も多く、こうした安心して過ごせる場所があることで、学生同士の交流が生まれ、学修相談もしやすくなります。結果的に、基礎的な学修習慣を身につける環境づくりにもつながっていると感じています。こういう場所をキャンパス内に増やすことで、学生同士の交流も促すことができますし、より安心して学修にも取り組めるようになると思います。

株式会社エンカレッジのチャレンジ

株式会社エンカレッジは、発達障害や精神障害など、就労に不安を抱える若者のキャリア支援をおこなっています。主力は就労移行支援事業。自己理解から実習、就職・定着までを一貫して支える伴走支援に特徴があり、大学や企業と連携した仕組みも整備。オンライン就活支援やキャリア教育にも取り組み、若者一人ひとりの「働きたい」という気持ちに、社会的な選択肢と環境をつくり続けています。

発達障害の若者に、
「自分らしく働く」道を。

株式会社エンカレッジ

大阪市西区新町1-4-26 四ツ橋グランドビル2F

https://en-c.jp

発達障害の若者に寄り添う、
“就労移行支援”の仕組み。

「向いていない仕事でも、受け入れるしかないんです」。この言葉に心を動かされたことが、株式会社エンカレッジ創業の原点です。発達障害のある若者が、自分に合う働き方を知らないまま社会に出るという現実。その課題に向き合うため、まずは障害学生向けのインターン支援事業が始まりました。

現在は、就労移行支援、自立訓練、求人紹介、キャリア教育プログラムなどを展開。中でも、就労移行支援では、「就職する力を育てる」ことだけではなく、「働き続けられる環境を見つける」ことに重点を置いています。講座や模擬業務を通じて、自分の特性や得意・不得意を知り、実際の企業での職場体験を経て、現実の“働く”を自分ごととして捉えていきます。

「思ったより体力が必要だった」「挨拶で職場の雰囲気が変わった」――こうした実感が、自己決定を支える鍵になります。スキルや知識を教えるだけでなく、自己理解を深め、“自分らしく働ける場所”を一緒に見つける。そんな支援が、エンカレッジの真髄です。

企業・大学と連携し、
「定着」と「安心」を支える。

エンカレッジが大切にしているのは、「就職して終わり」ではなく、「働きつづける」こと。就職後も、支援者が企業と本人の間に入り、業務内容や配慮の仕方を調整。たとえば、口頭指示が苦手な方にはチャットでのやりとりに変えるなど、本人の特性に合わせて“働きやすさ”を共に設計します。こうした工夫が、職場全体の働き方改革にもつながっています。

 また、大学との連携も積極的です。キャリアセンターや障害学生支援室と連携し、在学中から卒業後の支援までをスムーズにつなげる体制を構築。複数大学が協働するキャリア教育プラットフォーム「PLUSTAR(プラスタ)」では、診断を受けていない“グレーゾーン”の学生にも対応可能な教育・支援の枠組みを構築中です。

 企業と大学、そして本人。その三者をつなぐ“ハブ”として、エンカレッジはそれぞれに寄り添いながら、「誰も取りこぼさない支援」を形にしています。
 「働けない」のではなく、「働ける環境に出会っていないだけかもしれない」。エンカレッジは、若者の“働きづらさ”を社会全体で支えるしくみを目指しています。

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