36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2018年度 日本福祉大学
第16回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 ひと・まち・暮らしのなかで
第2分野 スポーツとわたし
第3分野 日常のなかで つながる世界
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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入賞者発表
第2分野 スポーツとわたし
優秀賞 悔しいけど
盈進高等学校 1年 北原 匠

 運動会はいやな日だ。
 私は、骨幹端軟骨異形成症という、2万人に1人の割合で発病する厚労省指定難病と共に生きている。生まれつき骨の成長が極端に遅い。現在、身長97㎝、体重22㎏。脊椎の側彎を伴い、毎日3種類の投薬が欠かせない。
 運動会はいやだが、徒競走には毎回出場している。体力がないので、みんなの距離を走ることは難しい。だから、距離を短くしてもらっている。すると、私が1位になる。その時、仲間や観客がどう思っているのか。考えると胸が痛い。そして、悔しい。だから、毎年少しずつ、距離を伸ばしている。本当はみんなと同じ距離を走りたいと思うのだが。
 小学校の頃は、体育の授業やマラソン大会、鬼ごっこやドッジボールなどは、生死に関わる危険を回避して、できる範囲で参加した。
 中学生や高校生になると、仲間の体も随分と大きくなる。体育の授業はレベルアップし、参加したくてもできず、見学せざるを得なくなった。「参加したい!」と思っても、仲間と同じことをすると、体への負担が大きく、大けがにつながってしまうという恐怖がある。
 しかし、私は、小学生の頃に感じた楽しさをもう一度、仲間と共に味わいたいと思う。仲間と一緒に、運動会やマラソン大会に参加し、自分ができる範囲でスポーツを楽しみたいと思っている。
 先日、父に誘われ、父の仲間とバドミントンをする機会があった。自分のペースで、普通に楽しめたことに、大きな喜びを感じた。そして、「バドミントンができる!」という少しの自信も手に入れることができた。いま、私は、バドミントン以外にも、自分ができるスポーツを見つけたいと思う。まだ始まったばかりの高校生活の中で、スポーツを楽しむ自分と出会いたい。それは、自分の幸せと同時に、私と同じようにハンディーのある人に、希望や勇気を与えることができるかもしれないと思うからだ。
 「悔しい」けど「楽しい」。それが、私にとってのスポーツだ。

講評

 作者が難病の当事者として、できなかったことに挑戦し、達成できた時の喜びが素直に書かれた作品です。読後、作者の前向きな意欲に私たちも励まされたように感じました。自分自身が体験したことを正直に書いているからこそ、文章から迫力が感じられます。話を美化したり、美しい文章にまとめるのではなく、等身大の表現にしていることが、作者の気持ちをより強く伝える結果になっているのでしょう。
 小学生から高校生までの「過去」と「現在」をしっかり書き、挑戦による成長がしっかり伝わる点も、この作品の完成度を高めています。

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