36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2011年度 日本福祉大学
第9回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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入賞者発表
第3分野 わたしが暮らすまち
優秀賞 藍色の良さ
福岡県立輝翔館中等教育学校  6年 原 朱音

 私の母は、夏になるとよくもんぺを着ている。なぜもんぺを着るのと聞いたところ、「普通のズボンより涼しいから。」と言った。全く意味がわからない。ふくらんで見えるので見た目は悪く、薄い生地のズボンの方がいいのではと私は思っていた。
 母が着ているもんぺは久留米絣からできている。久留米絣は糸を部分的に藍色に染め、それらの糸を上手に織り込んでいくと様々な模様ができる織物である。
 私が住む筑後市は久留米絣の産地で、これを扱う店が家の近隣にもある。昔は機織機を使い、人の手作業で一つひとつ織られていた。現在は、機械を使っている所がほとんどである。
 久留米絣が筑後市の伝統工芸品であることを私は小学生の時に知った。その時の私は久留米絣に対して、良いイメージがなかった。藍の独特なにおいと、何より藍色という古くさい感じが嫌いだったからである。
 その考えが少し良いイメージに変わったのは、小学校の高学年のときだった。家庭科の授業で久留米絣を使った袋を作ることになった。授業なので嫌いだから作りたくないとは言えず、仕方なしに作った。
 しかし、自分で作った袋なので愛着が出てきた。完成した袋は、エプロン入れとして使うことにした。
 不思議なことに、洗濯すると生地の薄いエプロンよりも乾くのが早い。この時久留米絣は、通気性が良いと感じ、母が言っていた言葉を理解した。そして、久留米絣の良さを知ったことで、私が持っていたイメージは良いものに変わった。
 普段洋服を着る私たちは、久留米絣を使った服を着ることはほとんどない。久留米絣の良さをアピールする為に、地元の人々は現在、ふくろうの置き物などに久留米絣を使っている。
 しかし、私は母が着るもんぺを見ていた方が久留米絣の良さが出てくる気がする。そして今日も、もんぺを見て少しだけ涼しくなる私がいる。

講評

 作者が住むまちで昔からずっと作られてきた久留米絣に愛着を覚えている作者の気持ちがよく描かれていますし、久留米絣の魅力も伝わってきます。「わたしが暮らすまち」というテーマに合ったいい作品だと思います。最初は古くさい感じが嫌いだった久留米絣のもんぺに段々魅かれていき、長年受け継がれてきた良さがわかっていく過程が、うまく表現されている点を評価しました。気持ち良くよめて、すっきりした読後感を味わえるいい作品です。

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