36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2011年度 日本福祉大学
第9回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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座談会

社会の変化を反映した作品があり、興味を持って読むことができました。

今年は東日本大震災という未曾有の出来事があり、それを取り上げた作品が数多くありました。また、他の分野と比較して応募作品が少なかった第4分野の応募が増えたことも今年の特徴です。そうした状況もあって、今年は例年以上に白熱した議論が展開されました。作品を読んで感じたことや、エッセイを書く時に気を付けた方がいい点などを審査員の皆さんに話し合っていただきました。

審査員プロフィール

ワクワクしながら読みました。
加藤 今年の応募数は7882点でした。昨年と比較すると266点減っていますが、一昨年より多い応募数です。東日本大震災の影響で応募数が減るのではないかという不安がありましたが、全体的に見ると影響はあまり無かったようです。今年は中田先生に新しい審査員として参加していただきましたが、いかがでしたか?
中田 最初は全部読み切れるのだろうかと不安でしたが、あっという間に読んでしまいました。読みながらワクワクしましたし、レベルの高さには正直、驚きました。
川名 よく「最近の若者は……」と言われますが、こうしたエッセイを読んでいると、みんなしっかり考えていて、未来に希望が持てますね。
角野 私は第1回から審査員をしていますが、作品の質が毎年上がっていると感じています。
杉山 私も第1回からの審査員として参加していますが、同感です。
板垣 私は前回からの参加です。昨年も感じたのですが、優秀な作品がすぐに決まる分野もあれば、抜きん出た作品が無くて甲乙付けがたい分野もあって、分野ごとの差があったように感じます。
加藤 今年の際だった特徴は、個人の応募が減少したことです。特に、第3分野の「わたしが暮らすまち」は、個人の応募が極端に少なかったですね。でも、最終審査には、個人で応募された作品がたくさん選ばれました。学校でまとめて多数の作品を送っていただけるのもありがたいですが、個人の応募にも期待しています。
段落分けを考えながら、推敲することが必要。
杉山 昨年の審査会で私が「手書きの作品が多くてホッとした」と発言した影響があったのかどうかはわかりませんが、今年は手書きの作品が多かったような気がします。
角野 読みやすい上手な字で書かれている作品がたくさんありましたね。キレイな字やかわいらしい字など、書いた人の人柄や雰囲気が伝わってきて、読んでいて微笑ましくなりました。中には、読みにくい作品もありましたけどね。
板垣 文字から「これを書きたい!」という熱い思いがあふれている作品には、好感が持てました。でも、勢い余ってなのか、段落替えが一つもない作品が何点もあったのには驚きました。段落替えは読みやすくするだけでなく、その段落の中で何を言いたいのかを整理する機会にもなるのですから、段落替えにも気を配って欲しいと思います。
加藤 段落替えをしながら、もう一度読み直すことが大事ですね。最終審査に残った作品の中にも、明らかな誤字がありました。書いた後にもう一度読み直していれば、気付くはずなんですけどね。明らかな誤字・脱字があると、どんなに内容が良くても、それだけで減点の対象になってしまいます。ワープロやパソコンを使っていると、誤変換もあるでしょうが、手書きなら辞書を確認しながら、誤字・脱字が無いように気を配って書いて欲しいと思います。
角野 作品を書き上げたら、最低3回は声を出して読むことが大事だと思います。声を出して読むと、書いているときには気付かなかった点を発見できますから。
杉山 読み直すと、「ここはいらない」「ここは変えた方がいい」と気付いて、推敲できるものです。書きっぱなしではなく、もっともっと推敲して欲しいですね。
中田 私が感じたのは、「最後の3行が無かったらもっと良くなるのに」と思う作品が何点もあったこと。作品の体裁を気にするあまり、言いたいことを最後に無理矢理まとめている感が出てしまっていますよね。
加藤 最後で考えを補強したつもりなんでしょうが、かえってマイナスになってしまうことが多いですね。あるいは、最後の数行を言いたいのが先にあって、それから前の部分を考えるのかもしれません。でも、締めくくりが良くないと、画竜点睛を欠く作品になってしまい、印象も悪くなります。
川名 内容はいいのに、タイトルが平凡で損をしている作品も数多くありました。文章を書いている私たちも、タイトルや書き出し、締めくくりにはいつも頭を悩ませています。だからこそ、そこが魅力的だと、作品の評価がグンと良くなります。
「勢い」と「文章力」のバランスが大切。
川名 今年は東日本大震災をテーマにした作品が多くなることは予想していましたが、その反面で、戦争や原爆を取り上げた作品が少なかった印象を受けました。今の高校生にインタビューをすると、アメリカと戦争をした歴史を知らない人もいるようです。60年以上平和が続いているのはいいことですが、戦争のことを忘れて欲しくありません。
杉山 戦争のことを、私たち大人が語り続けていかなければいけないと改めて思いました。そして、高校生の皆さんも、しっかり考えて欲しいですね。
板垣 話は変わりますが、審査する側にとって、勢いはあるけど文章力に劣る作品と、文章は上手だけれどインパクトが少ない作品があったとき、どちらを上位にすべきか迷ってしまうことがあります。
中田 今回、初めての参加でしたので、私も評価基準は悩みました。
加藤 選んだ分野やテーマによっても違うでしょうね。勢いがある作品に好感を持つ場合もあれば、静かな語り口の作品だけど、良さをジワジワッと感じるものもあります。
角野 審査員の皆さんの見方や評価のポイントが違うから、いろんな意見を出し合って決めていく審査会を毎年楽しみにしています。そういう見方もあるんだなって。
杉山 「若さ」はときには突出したり、フライング気味だったりしますが、それが無くなったら、「若さ」の意味が薄れてしまいます。思い切って挑戦してください。ただ、その一方でバランス感覚も生きていく上で大切だと思います。
川名 いずれにしても、問題提起は大切ですが、どんなに論旨がまとまっていても、文章力があっても、読んだ人が共感できる内容でなければ、優秀な作品として選ぶことはできないと、私は考えています。
加藤 今日は長時間にわたって審査をしていただき、貴重なご意見もお聞きしました。ありがとうございました。
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