36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2011年度 日本福祉大学
第9回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
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入賞者発表
第3分野 わたしが暮らすまち
審査員特別賞 温かい愛であふれる小さな町
山梨県立身延高等学校 1年 望月 文乃

 「今年は、最後の学園祭だから盛大にやりたいよね。」昨年の初夏頃、私は生徒会の会議でこの一言を発した。
 「最後の学園祭」そう、私が通っている中学校がこの1年で閉校となってしまうのであった。
 そこで、私は考えた。この地域で古くから伝わっている伝統芸の太鼓をやろうと。
 それから1ヶ月後。私は他の生徒会役員と一緒に山の奥にある太鼓の練習場へ行った。
 練習場に入ると二人のおじさん達が私たちを迎え入れてくれた。この方達は、太鼓を長年やっているベテランの人であった。そして私たちの中学校の卒業生であった。そのためか毎日夜遅くまで熱心に指導をしてくれた。
 その指導には、太鼓の叩き方以外にも最後の学園祭を素晴らしいものにしてほしいという母校への熱い思いが込められているように感じられた。私はこの思いに応えられるよう一生懸命練習し続けた。
 そして本番。会場には、在校生はもちろん、多くの地域の方たちが観に来ていた。私はこの時初めてあることに気がついた。それは、「私たちの中学校はこんなにも多くの人から温かく見守られている存在なんだ。」と。
 私は多くのお客さんを前に、無事に発表を大成功で終わることができた。会場は、われんばかりの拍手が続いた。中には涙を流している人もいた。
 あのひと時を今も忘れることはない。あの会場は、地域愛であふれていた。今は私たちの地域には、中学校がなくなりすっかり静かになってしまった。しかし、地域の人達の心には今もなおあの時の温かさがあり、そして伝統も残っている。
 「どんなに小さな町でも、そこには地域の人たちの温かい愛があふれている。」それが私たちの町である。私は、この町で暮らしていることを本当に幸せに思う。

講評

 「閉校」という暗くなりがちなテーマを、作者たちが学園祭を盛大に行い、地域の方たちも集まってきて別れを惜しむという明るい話にしています。作者の気持ちが全面に出過ぎた気負った文章ではなく、作者が見たことや感じたことを素直に表現している点に好感を持ちました。最後の学園祭で披露される伝統芸の太鼓を指導する卒業生や、当日会場に見に来た地域の大勢の人々の温かい気持ちがエッセイの文章から伝わってきて、読者も温かい気持ちにしてくれます。ここに、同級生や、参加した人たちの声を加えると、さらに良くなったと思います。

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