36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2011年度 日本福祉大学
第9回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
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入賞者発表
第4分野 社会のなかの「どうして?」
審査員特別賞 消える戦争
福岡県立輝翔館中等教育学校 6年 本田 夏紀

 先日、爽やかな表紙に目を奪われて、普段手にしないような「戦争」を題材にした小説を読んだ。
 しかし、たった2、3行読んだ所で困ったことが起きた。
 「特攻」「零戦」「空母」といった言葉の意味が理解できないのである。
 父に尋ねてその意味を知り、読み進めることはできたのだが、当たり前に記されている言葉を、私は何故知らないのかと少し傷ついた。
 振り返ると、私はこれまで戦争に関する様々な学習を避けてきたように思う。累々たる屍という戦争の持つ印象に恐れを抱いて、決してその死の意味にまで触れようとはしなかった。
 小学生の時の平和授業では、原爆のアニメ映画が恐くて、欠席したことすらある。
 また、長崎や広島の原爆の話が中心であったため、日本は一方的に被害者であるように導かれ、朝鮮半島や中国大陸での蛮行には目を背けてきたようにも思う。
 いつしか、近隣のアジア諸国に今日も残る反日感情の意味を理解できなくなっていた。私の中には、今日の日本にとって都合のいい虚像の歴史だけが植え付けられてきたのではないだろうか。
 今日の日本は、原爆を投下したアメリカとパートナーシップを結び、「嫌中」と言いながらも、中国は第1位の輸出入相手国である。
 それはまるで65年前に何事も無かったかのようである。日本にとって、何故戦争に至ったのか、どうして避けられなかったのかは、さほど重要な問題ではないのだろうか。
 結局、私達の世代は、過去の戦争の意味も知らないままに生きてきたのである。
 私は一人の日本人として、改めて戦争について学びたいと思う。それは平和に生きる私達が、どのように今日を迎えたのか、そしてこれからどのように平和を維持して行けば良いのかを知りたいからである。
 互いの生きる権利を奪わない。そのことが、国際化の進む今日、日本人が忘れてはならない大切なことではないだろうか。

講評

 この作品を読んで、「特攻」「零戦」「空母」といった言葉の意味が理解できない時代になったんだと、あらためて実感しました。「戦争」という忘れてはいけないテーマにきちんと向かい合って、エッセイにまとめてくれた点を評価しました。問題意識をしっかり持って、自分の周りを見返す目を持っているところがいいと思います。このエッセイを書いたことをきっかけとして、周りの友達も巻き込みながら、もっと深く考えて欲しいですね。そんな気持ちを込めて、審査員特別賞に選びました。

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