36℃の言葉。あなたの体温を伝えてほしい。 2011年度 日本福祉大学
第9回 高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト入賞作品集
学長メッセージ
審査員の評価と感想
入賞者発表
第1分野 人とのふれあい
第2分野 あなたにとって家族とは?
第3分野 わたしが暮らすまち
第4分野 社会のなかの「どうして?」
学校賞
 
募集テーマ内容・募集詳細はこちら
応募状況
参加校一覧
HOME
入賞者発表
第4分野 社会のなかの「どうして?」
最優秀賞 「普通」のレベル
神奈川県立港北高等学校 2年 松原 あずみ

 3月11日、東北地方を大きな地震が襲った。神奈川でもかなり揺れ、たくさんの人が被害にあった。
 その日から「普通」は消えてしまった。
 ニュースはその話で持ち切りで学校も休みになった。明るかった街灯も消え、暗くて静かな街を見た。見慣れたはずの街がまるで違う街のようで怖かった。
 でも、私が一番怖かったのは、両親とスーパーに買い物に行った時に見た光景だった。
 今までに見たことのないような数の客、空っぽの商品棚、品出しのために店内を走り回る店員、我先にと買いだめをする人々。
 そのため私の周りでもトイレットペーパーがないとか卵や牛乳が買えないなどの話もたくさん耳にした。
 地震からしばらくは計画停電のために街中の乾電池も消え、道に出るとガソリンスタンドの前には見たことのない程長い渋滞ができていた。人は「争い」をしているように感じた。
 私は初めて「普通」を失った人間の姿を見た気がした。たぶん、その人たちは今まで通りの生活ができなくなるという恐怖に脅えている。だから、他人を忘れ自分の事に精一杯になってあんなにも恐ろしく変わってしまうのだろう。
 私は「普通」とは何か考えてみた。それは「便利」や「贅沢」とも似ていると思った。実際、災害の影響でエスカレーターが止まったり、電車が少なくなったり、街や店が少し暗かったりして「不便」だと感じる人もいただろう。私もその一人だ。しかし、1ヶ月も経てばそれが「普通」となり「不便」は消えた。
 現代人は「便利」や「贅沢」を知りすぎ、欲張りになり「普通」に求めるレベルが上がりすぎてしまったのだと思う。
 これを機会に、皆が「普通」のレベルを少し下げて、その分少し努力すれば現代社会の問題が少しでも良い方向に進むと私は思う。

講評

 東日本大震災以降に、作者が実際に経験をしたことを書いていますから、説得力があります。そして、第4分野のテーマである「社会のなかの『どうして?』」にしっかり向かい合ってまとめている点が、最優秀賞に選ばれるポイントになりました。そして、「普通」という日常的に使われる言葉をキーワードとして、作者の考えをうまくまとめています。「締めくくりの数行が無ければ良かったのに……」と残念に思う作品が目立つ中で、「現代人は『便利』や『贅沢』を知りすぎ、欲張りになり『普通』に求めるレベルが上がりすぎてしまったのだと思う」と、自分の主張を自分の言葉で書いている点がいいと思いました。

UP